災害が育む自然・歴史・まちづくり 
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東海地震と東南海地震


 先日の9月5日の地震で揺れが強かったのは前回の東南海地震の揺れが強かった場所と全く同じです。先日の地震は震度3の上から震度4の下ぐらいです。震度は2つ上がると10倍の揺れになります。今度の東海・東南海地震では震度6弱から6強が予想されます。4の下と6の下とでは10倍違います。ただ私たちは有力な武器を今持ちつつあります。それはナウキャスト地震情報(緊急地震速報)というものです。これによって震源の近くで地震計が揺れたことをキャッチしたら、「30秒後に揺れます」ということをすぐに教えてもらえるのです。そうすれば私たちは逃げることができます。ナウキャスト地震情報の画面は、地震が起こった瞬間に震源の場所、マグニチュード、予測震度を教えてくれます。そんな技術を私たちは持ち始めています。だから来るべき巨大地震の時に命を失わずにすむチャンスはあります。
 先日の揺れで名古屋市内のよく揺れた場所は南区とか中川区とか西区です。私だったら堀川より西に住むのは絶対嫌です。なぜなら西に住む人と東に住む人との建物の耐震性は同じだからです。西の方がはるかによく揺れるわけだから、何倍も死亡確率が高くなります。そういったことって考えたことがありますか。家を買う時にちゃんと過去の災害のことを調べたことがありますか。過去の地震でどこが揺れたかというのを調べていくとよく揺れるところは決まっています。平野の地盤が悪いところです。そして揺れるところは水害にも弱いのです。
 これからやってくる地震では神奈川から宮崎までの広い範囲で震度6以上の揺れになります。震度6以上の揺れに見舞われる場所に住んでいる人の数は4000万人です。日本人の3分の1が被災するのです。その覚悟はできていますか。そして被害は甚大です。これからやってくる地震の被害は神戸の被害と比べると、死者は5倍くらい、建物の損壊は10倍くらい、経済被害は10倍の80兆円が飛んでいくおそれがあります。80兆円がどういうお金かというと、日本の国家予算です。国家予算と言いますが、実は税金で納めているのはたった40兆円です。残りは借金です。私たちが納めている税金の2年分がこれから数10年以内に非常に高い確率で消えていってしまいます。どうしてそういうことになってしまうかというと、駄目な建物をそのままにしているからです。日本の建物の3分の1は駄目なままです。その建物が壊れるから人も死に、けが人も出、そしてお金もなくなります。こんなに大きな被害を出したら、日本が持つはずがありません。関東地震の時と同じです。でも関東地震の時は日本が貧しかったので世界が助けてくれました。しかしながら今、日本は世界で2番目に裕福になっています。そんな日本から80兆円ものお金が消えた時にいったい誰が助けることができるでしょうか。
 とんでもない被害が待ち受けているのです。それに対して私たちはどのくらい防衛力があるのでしょうか。4000万人が被災する地震に対して、例えば消防士と自衛隊はたった15万人ずつしかいません。愛知県を守ってくれている消防士は確か8000人ぐらいです。8000人で700万人を守っているのです。1人で1000人も守らないといけないことになります。役所の方々はだいたい人口100人に対して1人です。本当に悲惨な状況になります。それぐらいひどい被害だから全員が頑張らないといけません。お役人に頼っても、消防士に頼ってもいけないのです。自分たちで頑張らないと生き抜けないということです。
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