災害が育む自然・歴史・まちづくり 
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今やるべきこと


 本当に生き抜きたいのだったら、家を直さなくてはいけません。家一件直すのに平均150万円かかるそうです。150万円出して直せば、家族の命も守れる、生活も守れる、何千万円という財産も守れます。しかも150万円出さなかったら、全壊した家屋に対して、国や県は全部で千数百万円のお金を出すことになります。その千数百万円のお金は家をちゃんと守り抜いた人たちがみんなで応分負担するわけです。ひとりが150万円出さないおかげでその10倍のお金を周辺の人たちが出さないといけないかもしれません。そんな馬鹿なことはありません。日本に今どれだけ駄目な建物があるかというと1400万戸あります。1400万戸に150万円かけると20兆円です。東海、東南海、南海地震の被災地だけだったら6兆円です。20兆円ぐらいなら出せるのです。日本の国民総生産は500兆円。現役の方々は悲しくなってしまう事実ですが、借金が700兆円以上もあります。借金をしたのは私たちの大先輩です。こんな700兆円の借金から考えれば、20兆円払えば日本を救えるのだったら自分たちで払わないといけません。できればその大先輩が若い世代の人のためにお金を使って家を直してあげていただきたい。それが過去の教訓を将来につなげる一番大事なことだと思います。私たちは今すごく近視眼的にお金を使っています。ここ数年、金融機関を救うために公的資金を投入しています。戻ってこないお金も10兆円あります。今貸し出し中なのは12兆円です。そして去年の為替差損だけで8兆円です。このお金と同じお金を使えば日本は救えます。このお金はお金を貯金している人たちを守るために使いました。お金を持っている人たちに20兆円使ってしまったわけです。こんなことをしていて本当にいいのでしょうか。そして私たちの国で建物の維持補修に毎年6兆円ぐらいのお金を使っています。維持補修というのはリフォームのことです。今のリフォームは家をかっこよくし、使い勝手をよくします。そのために柱をとったり壁をとったりしていて、建物の耐震性を落とすようなリフォームだらけです。でもその6兆円を使えば、東海、東南海、南海地震の被災地の建物を直すことができてしまいます。これが本当にかしこい国民といえるのでしょうか。これが本当に過去にいっぱい災害を経験してきた日本の国民性といえるのでしょうか。ものすごく間違ったこの半世紀を過ごしてきてはいないでしょうか。
 東海地震騒ぎのおかげで全国比較するとこの東海三県は全国で一番耐震化が進んでいます。小学校、公的建物、一般一戸建て住宅の耐震診断と耐震改修率は、いずれも全国でトップクラスです。これはここ数年来、防災局の方々がとても頑張って予算要求をし、地域全体で何とか頑張ろうとしていたおかげです。でもこんなに頑張っていても耐震診断はどれくらい進んでいるかというと、愛知県にある駄目な建物のうちの数%です。でも全国では優等生です。実は3年前は落第生でした。3年間でここまで来られるということは日本も捨てたものではありません。やればできるのです。このことに早くみんなが気がついてやらなかったら、次の子供たちの世代にこの豊かな日本を引き継げないということになります。そういった意味で早くこの愛知県がいい見本をたくさんつくって日本全体を救ってあげる必要があるだろうと思います。とはいえ、同じ愛知県下でも成績はまちまちです。同じ税金を納めていても町によって安全度は全然違います。それぞれの市町村の防災担当者や市町村長や住民など、いろんな力が結集しているところはものすごく安全なまちづくりをもうすでに始めています。これはみなさんの意識次第です。私たちが住んでいる名古屋を見てみると、広小路通にも錦通にも桜通にも耐震性の劣るビル群が連なっています。でもみなさんがお過ごしなのはこの愛する名古屋です。この愛する名古屋で神戸のような風景を見ないようにしなくてはいけません。そのためには何度も申し上げますが、早くこの事態に気がついてみんなでお金を投入して直すべきものを早く直しましょう。
 どうもありがとうございました。
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