災害が育む自然・歴史・まちづくり 
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日本列島


 世界はどうつくられてきたのでしょうか。ものすごく古い歴史になりますが、地球には何度も何度も大きな大陸ができています。超大陸です。この超大陸というのは10億年に1回ぐらいずつできてきています。全部の大陸が集まって1つの超大陸ができ、その後離れてばらばらになっていきます。
 日本はどうやってつくられたのでしょうか。日本はいったい昔はどこにあったかというと、昔はどこにもないのです。アメリカや中国は昔からある大陸の上にあります。でも日本はそうではありません。日本のつくられ方は諸外国とはまるで違います。例えば東日本の太平洋側は、太平洋の東端で湧き上がってきたマグマが冷えて固まり、それがプレートとしてどんどん日本列島までやってくることによってつくられたのです。日本列島までは1億年くらい旅をしてやってきます。1億年も経つとくたびれ果てて重くなってきます。若いプレートと出会うと重くなったプレートは沈み込んでいきます。沈み込んでいく時に何が起こるか。太平洋の中にはいっぱいプランクトンが住んでいて、このプランクトンが死ぬと死骸が海の底に溜まります。プレートは死骸となったプランクトンや魚の骨をいっぱい載せた状態でやってくるのです。沈み込んでいく時にこの1億年分のごみまで一緒にくっつけて沈み込んでいけないので、ごみだけが溜まります。そこにごみだめができます。そして沈み込んでいったプレートがある深さまでいくと熱くなって周辺の岩石を溶かし、そしてマグマとなって出てきて火山をつくります。そして火山によってつくられた岩が貫入してきます。すなわち日本はヨーロッパやアメリカとは全然違って、太平洋にあったごみだめとそこから沈み込んでいったプレートの周辺からできたマグマの塊とでできている国です。そんなごみだめに住んでいるという自覚をみなさんが持っているかどうか、これが問題です。
 ごみだめであると同時にプレートとプレートが押し合っています。だから最悪です。日本列島は世界で最も雨がよく降るアジアモンスーン地帯にあります。雨がいっぱい降ると同時に台風もいっぱい通過していきます。こんなごみだらけのぐちゃぐちゃの地盤に雨がいっぱい降るから土砂崩れが起きます。だから土砂災害も起きるわけです。このところ日本中で土砂災害だらけです。アメリカに行っても土砂災害なんてあまり聞きません。ヨーロッパでも聞きません。風水害、土砂災害、そしてマグマが出てきて火山災害、そしてプレートとプレートの押し合いで地震災害も起きます。まさしく災害の百貨店のような国に住んでいるのです。日本は災害とともに歩んできました。でも時々いいこともあります。ごみとなったプランクトンの死骸は石灰岩になっています。日本中いたるところで石灰岩が採れます。石灰岩はセメントとなってビルになっています。だから悪いことばかりではありません。少しは災害と仲良く付き合っていくということを私たちも始める必要があります。
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