「語り」のかたち−自発的な談話における話し言葉のすがた− 
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語りとかたちのどこに注目するか?


 こころに浮かんだ出来事を言葉にする時には、必ず伝えたい人やものがあります。それはちょうど、目の前の光景を写真にとることに似ていると思います。一番意識に残っていて、一番伝えたいものは、普通は画面の中心におきます。そして、中心のものを際立たせたければ、背景をぼやかします。つまり、目の前にある全てのものに対して、全く同じような注意のあて方をしているわけではないのです。あるものやある出来事に特別に意識が向くと、その周りのものに対する意識が少し薄れていきます。そういった性質が、こころに浮かんだ出来事を言葉にする時にも現れるのではないか、つまり、相手に伝えたい人やものは、どのようなかたちになり、文のどの位置に現れるのか、そのかたちや位置には一定の方向性(傾向)はないのかということに注目したいと思います。
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