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熊谷吉治先生 |
「語り」のかたち−自発的な談話における話し言葉のすがた− |
はじめに
『「語り」のかたち』というタイトルで始めていますが、一口にかたちといっても、音によるかたちもあれば、文字によるかたちもあります。もちろん、他にもかたちはありますが、それらを網羅的に考えることはせず、自発的にしゃべってもらうという意味での語りだけを題材にしていきます。とはいえ、語りといっても人の経験は千差万別ですので、経験の内容と話をしてもらう時の条件をなるべく近いものにして、その上で語ってもらったものを聞き取り、複数の人による語りの中に類似性はあるのか、それとも人それぞれ全く違った語り方をしているのかを検討していきます。それからもう1つ、国や地域によっても言語は大きく違います。発音にしても文字にしても、非常に違うわけです。しかし見方を変えると、我々は同じ人間ですから、ある同一の出来事を経験した時にその語りの方法に似通ったところがあるのではないか。つまり、言語が違っていても語りの中身についてはその方向性が同じなのではないか、そういう部分を考えていきたいと思います。
熊谷吉治先生