4.語りは、自動詞と他動詞の違いを教えてくれる
主語の位置に新情報を導入する頻度は低いですが、先ほどの表1で、自動詞か他動詞かによって、新情報が来る頻度に差があるというデータが出ていました。これは偶然なのでしょうか?まず自動詞と他動詞は何が違うかというと、先ほども言いましたが、簡単に言えば目的語をとるか、とらないのかということです。他動詞は出来事が起きた時、「誰々が○○を引き起こす」という関係になっています。 しかし自動詞は、そういう「○○を」に相当するものがなく、出来事が完結するような場合(例 誰々が来た)になります。ただ、自動詞と一口に言っても、その主語の位置に何が来るかということで、実は2つに分けることができるのです。
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それから、人以外を主語としてとるものに「飛んで行く」(fly off)という動詞が語りの中で何回も使われています。これは「帽子が吹き飛んでしまう」という出来事を表していますが、この場合の主語というのは、画面の中にポッと出てきたもの、あるいは飛んでいってしまったものという、ある意味では目的語みたいなものになっているのです。
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He kicked a ball.のballに相当するように、止まっている状態から動いた状態に変わっていくというものであって、動くというのは自分の意志で動いているというよりは、見ている人からすると画面の端から中央に来てまた出ていくという、そういう出来事を表しているに過ぎないのです。ですから、仮に主語の位置に新情報が出てくるとしても、意味的に考えると目的語のようなものが来ているのです。少し矛盾したような話になるかもしれませんが、自動詞の中には目的語みたいなものを主語の位置にとるものが現れるということです。