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登場人物も大きく違います。能は、源氏物語の六条御息所や夕顔など、物語の中の登場人物や有名な人たちの幽霊、歴史上の有名な武将や人物である源義経や弁慶、静御前などが舞台上に登場します。観客は憧れの念を持つような歴史上の「ある一点」「ある物語」「ある場所」を観劇します。狂言では、名もない普通のおじさん、おばさんが登場人物となっています。まず、舞台上に人物が登場すると「名乗り」と言われる自己紹介をします。その際、ほとんどの場合が次のようになります。
これはこのあたりに すまいいたすもの でござる
これは「私はこの辺りに住んでいるものです。」という意味であり、その舞台から一番近いところにいる人が舞台上で何かをしようという感覚を出そうとしているのです。
この登場人物や空間の違いは、能は夢物語のとても遠い世界を表現し、狂言は観客と身近さを表現するという違いを生み出しています。夢の世界と現実の世界、その違いをあえて舞台の上で作ろうとしているのです。