「国際文化」とは?A環境をめぐる「伝統の知」の再編と世界システム 
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現代に蘇った『チャク』-フェスティバル・デ・ビクーニャ-

 6月24日はペルーの記念日で、昔はその頃にインティライミという太陽のお祭りをやっていました。現在、この日には特に大々的にお祭りとしてビクーニャを捕獲し、そこに大統領も招待するようになりました。
 ビクーニャの保護区にルカーナスという村があります。1960年代、ビクーニャが非常に少なくなって絶滅の危機が迫った時、政府がここを保護区にしました。その時にルカーナスの人たちは、自分たちの高原の土地を政府に提供しました。現在は国立公園になっているのですが、ここに生息しているビクーニャを利用する権利を、この土地の村人に与えるという法律ができました。ですから、ここの人たちは、かなり広い地域に住む、1万頭以上のビクーニャの利用権を手にしているのです。
 6月24日、フェスティバル・デ・ビクーニャ(ビクーニャのお祭り)を見学に来た人たちは、コカの葉、コカインの原料になるものですが、これを噛みながらビクーニャの捕獲の成功を祈ります。先住民の人たちは、昔から儀礼や労働の時にコカの葉を噛みました。一種の麻酔作用がある葉ですが、アンデスの先住民たちが労働や儀礼を行う時には、コカの葉を噛みます。

インカの儀礼のパフォーマンス

インカ儀礼のパフォーマンスの様子

 お祭りとしてのビクーニャの捕獲の後、インカの儀礼をまねたパフォーマンスが行われていました。ルカーナスの村の学校の生徒たちと先生が、一種の劇みたいなものをやっていました。その劇はインカの儀礼を再現していて、服なども学校の先生たちが作ったそうです。インカに扮しているのは学校の先生です。この学校というのは中学と高校が合わさったような学校で、コレヒオといいます。セリフもインカの言葉のケチュア語が使われます。
 ところで、これをどうやって再現したのでしょう。もちろん、昔のインカの人たちが、こんなことをしていたとは知る由もありません。伝統は途絶えていたのですが、クスコでインティライミが数十年前になって復活しており、それを参考にしています。民族アイデンティティーというのはこの公開講座のテーマでもありますが、民族アイデンティティーの高揚が非常に感じられるわけです。


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