輝け あいちっ子 
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それぞれの発達段階で大事にしたいこと

(1)乳児期
 子どもを生み、育てる基盤としての家庭、特に親の責任は大変重要であり、これはいつの時代でも変わらないものです。乳児期は、生涯を通して心身の変化が最も著しい時期と言えます。
 人間の脳は柔軟性に富み、特に乳児期は出生時から始まる生活環境の影響を大きく受けながらあらゆることを学び始めます。自分の周りの環境を少しずつ認識し、いろいろな刺激をどん欲に吸収すると言われています。人間は年齢が低ければ低い程周りからの影響が大きく、人間の個性の大部分は「三つ子の魂百まで」と言われるように、初めの3年間で形成されると考えられます。
ア 基本的信頼感と満足感を
 乳児期における家庭教育を考える時、赤ちゃんの人間形成の上で最も大切なことは、情緒の安定とそれに伴う信頼感や満足感をしっかり脳に刻み込み、体得させることです。
 信頼感は、お母さんを始め周りの大人が赤ちゃんを見つめ、優しく話しかけることや、赤ちゃんが母乳などを欲しがったり、抱いてほしいと泣いたりした時、タイミングよく、それを十分に満足させることによって、赤ちゃんの心に育っていくものです。
 生まれてまだ3か月頃の一つの特徴に「三か月微笑」というものがあります。これは赤ちゃんの心の発達課題の一つでもあり、「基本的信頼感」を獲得し始めた目安であると言われています。赤ちゃんは、多くのことを敏感に感じ取る能力を持っています。それはまず第一にお母さんに、そしてお父さんに深い信頼感を持つことから発揮されます。これは、その子どもの人生のスタートのところで大切な基盤となるものです。
 8か月頃から「人見知り」が始まり、人の違いを見分ける能力が育ちます。これは、初めての人に対する不安や警戒心を持つ知恵がつくまでに成長したということです。
 このようにまず「母と子の絆」をしっかり結び、次にお父さんへと広がり、人間に対する「基本的信頼感」が築かれていくことが大切です。
イ それぞれの発達の道すじ
 乳児期には多くの機能が発達します。この発達にはそれぞれの道すじがあります。
 (ア)運動機能の発達
 乳児期の終わりには基本的運動機能がほぼ完成すると言われています。運動機能の発達は、個人差が大きいものです。一般には、まず母乳を吸うということから始まり、首がすわり、手で物をつかみ、寝返りをし一人で座り、はいはいからつかまり立ちをし、そして一人で歩けるようになるという上から下へという道すじを通ります。この発達は、周りからの働きかけや知的機能の発達に密接にかかわりながら促され育つものといえます。
 (イ)言葉の発達
 赤ちゃんは、体全体で言葉を覚えていきます。生まれた直後から人の声と物音とを区別する聴覚、お母さん、お父さんの顔を見分けるようになる視覚、お母さんを感じる嗅覚、おもちゃなどを握る手やその他の触覚、またいろいろな味が分かっていく味覚など、すべての感覚を通して言葉を獲得していくものです。このように周りとの交流を豊かに持ちながら言葉は発達していきます。
 この時期の言葉の発達は、情緒の発達にも大きくかかわってくるものです。3か月頃の快、不快の感情の表れ、6か月頃のおそれ、嫌悪、怒りの感情、さらに1歳で得意な気持ちや愛の感情も分かるようになってきます。これらはみな言葉を発達させ獲得するための道すじであり、大切な準備期間だと言えます。
ウ 親子の絆
 乳児期の赤ちゃんとお母さんとのこうした愛情関係の形成は、赤ちゃんの精神発達を正常な軌道にのせ、パーソナリティの健康な発達に欠かせない心的栄養源となっていくことが確かめられています。
 このように、乳児期ではお母さんが主役です。しかし、子育てがうまくいくためにはお父さんとのチームプレーが必要なことは言うまでもありません。父母共同の子育てを通して社会性を身につけていくのです。

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