輝け あいちっ子 
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(3)母親の役割・父親の役割

ア 母性的保護と父性的保護
 最近、父親の子育て参加や父母共同育児ということがさかんに言われるようになりました。これは一つには、育児の負担が母親に重くかぶさってきて追い詰めることがあるので、父親も分担しましょう、ということです。もう一つは、子どもにとって、母親的かかわりと父親的かかわりの両方が必要であるという意味です。
 前にも言いましたように、親の大切な役割として、一人では生きられない子どもを保護することがあります。ところが、ひと□に保護すると言っても、いろいろな保護の仕方があります。けんかの仲裁をしてケガをさせないのも保護ですし、大ケガにならない限りギリギリまで見守るのも保護です。
 温かく包み込むような保護の仕方と、突き放し、子ども自身の力を試すような保護の仕方の両方のバランスがとれていることが大切なのです。

イ 理想の女性モデル・男性モデル
 子どもにとって、最も身近な大人の男性のモデルは言うまでもなく父親ですし、女性のモデルは母親です。男の子は「大人になったら、お父さんのようになりたい」と思いますし、女の子は「お母さんみたいになれたらいいなあ」と思います。また、自分のパートナーの理想として、お父さんやお母さんを思い描く場合もあります。この理想は、経験を積んで親を客観的に見られるようになると変化していきます。場合によっては反面モデルになることもあるかもしれません。しかし、親が理想像の原点であることは否定できません。子どもの目に、自分がどのような姿に見えているのか思いを寄せてみることも必要です。

ウ やってよいこと・悪いこと
 赤ちゃんのうちは何をやってもほめられたのに、1歳を過ぎるころから、叱られることが増えてきます。たたんである洗濯物をバラバラにしたり、お父さんが大切にしている本を破ったり、いたずらがおう盛になるにつれて、一日に何回も叱られます。
 一方、おばあちゃんにメガネを渡すとほめられたり感謝されたりします。ほめられたり叱られたりしながら、子どもはやってよいことと悪いことの区別をしていくのです。ところが、昨日は許されたのに今日は叱られたとか、弟は許されたのに自分は叱られたなど、一貫性のない叱り方や不公平な叱り方は子どもを混乱におとしいれます。どうして叱られたのか納得のいかない叱られ方もいけません。感情的で脅されるような叱り方は、恐怖こそ味わいますが、善悪を判断する力を育てることにはなりません。子どもが一生懸命理由を話そうとしても、親がそれを聞こうとせず一方的に言い聞かせようとすると、やってよいことと悪いことのルールを身に付ける前に、親の顔色をうかがうようになります。
 危険な時や人を傷つけるような緊急の事態は別として、「ああそうなのか。だからこんなことをしてはいけなかったんだ」と思えるような叱り方が大切です。

エ 家族の絆
 母親や父親の役割はたくさんありますが、家族の絆を確かなものにするのも大切な役割です。お父さんが乗っている踏み台をお母さんがしっかり支えようとしている姿とか、おばあちゃんの病気を心配しているお母さんに「きっと大丈夫だよ。みんなで力を合わせて世話しようよ」と励ますお父さんの言葉などから、子どもは家族の絆を感じとっていきます。
 いつでも家族のだれかが力を貸したり協力したりしてくれる信頼感こそが家族の絆です。

オ 複眼で見ることの大切さ
 子どもが育っていく過程には、多くのトラブルが生じますが、複眼的に見ることによってトラブルは成長のバネにもなり得ます。母親と父親が違った角度から見てみると、それまで見えなかったことが見えてくる場合があります。おもちゃをとられてばかりいる子どもを引っ込み思案で消極的とみるか、おもちゃを貸すことのできるやさしい子とみるかは難しい判断です。ゆっくり着替える子どもを、ぐずぐずしているとみるか、一つずつ慎重に着る子どもとみるかも難しいのです。
 どのような見方が子どもをよりよく成長させるのか、夫婦で複眼的に見ながら話し合いましょう。

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