学校におけるヒドゥン・カリキュラムの実際 
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小学生にみられる体育・スポーツにおけるジェンダー・バイアス(隠れたメッセージ)

(1)小学生(5年生)がとらえる「男のスポーツ」「女のスポーツ」

 ジェンダーに関して、小学生が知らず知らずのうちにどんなバイアスをかけられ、学び取っているかということを、知り合いの小学校の先生と行った授業の中で調べてみました。
 小学校の5年生に、男のスポーツは何か、女のスポーツは何かと聞いたら、こんな答えが返ってきました。男の方は野球、サッカー、ラグビー、アメフト、アイスホッケー、空手、K1、バスケット、相撲、ボクシング、ゴルフで、女の方はソフトボール、テニス、バトミントン、新体操、シンクロナイズスイミングと。先生はそうでない場合はないかと一つ一つをつぶしていく。そうすると、たとえばサッカーでも女子サッカーがあるというと、私もやっていると言う子がいる。空手でも、私は空手の道場に通っているよと言う女の子がいる。すると、空手も女でもいいことになる。野球は最後まで残る1つなのですが、新聞を読んだり親と野球の話をしたりしている子が、そういえば最近東京大学と明治大学で女子ピッチャーが出て活躍したという話を聞いたよと言う。その新聞の切り抜きを取ってくると、野球も女の子でもできるんだということになる。ソフトボールはオリンピックに出ているから女子でもできることはよく知っている。その結果、最後に残ったのは、男は格闘技であるK1と、女はシンクロナイズスイミングだったのです。
 このつぶしていく作業とは、男だからこのスポーツ、女だからこのスポーツではなく、実はどちらでもできるのだということ、男はこういうスポーツだというジェンダー・バイアスを子どもたちは知らず知らずのうちに持っていたことに気づかせるもので、これは非常に大きな教育だと私は思っているのです。
 もう封切りになったと思いますが、シンクロナイズスイミングも、埼玉の男子高校生のシンクロを取り上げた「ウォーターボーイズ」という映画が今ヒットしているようです。シンクロはここ数年アメリカでは既に男性がやっています。すごくアクロバット的なこともしますが、非常にきれいなシンクロで、ビデオもあります。
 このように男女によるスポーツ分けをつぶしていくと、男のスポーツ、女のスポーツに分けることはできないというと、今までどうして分けてきたのだろうかということを子どもたちが知ることは、今からの社会において非常に重要なことだと思います。子どもたちが知らず知らずに学んできたことに気づかせることによって、実は新しいスポーツのあり方を考えることになるのです。

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