いろいろな人権 『ハンセン病と人権』 
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私たちは…

人間回復の橋 予防法が廃止され、国の誤りが認められた今日でも、社会から排除され隔離収容された多くの人々が、遺骨になっても故郷へ帰ることを許されていない現実を、私たちはわが身に置き換えて考えるべきです。一人ひとりの偏見が、何千、何万の人々を苦悩に陥れ、人権を奪い、命まで奪ってしまうということを、このハンセン病患者への誤った隔離政策から学び取るべきなのです。そして、これからは一人ひとりが正しい知識を学び、理解を深め、日々の生活の中で思考や行動に生かしながら、偏見を解消していくことが大切なのです。感染症であれ、遺伝性疾患であれ、病気を理由とする差別は決して許されません。皆、同じ人間なのです。多くの年月と尊い人命の犠牲の上に架けられた人間回復の橋は、隔離を必要としないことを証明する橋として物理的な往来を可能にしただけでなく、全ての偏見や差別が解消された未来社会に通じる橋として、私たち一人ひとりの心に架けられた橋なのです。

(1)日本の伝統的社会慣習

日本の伝統的社会慣習  日本の伝統的社会慣習は「みんなと同じ、周りと同じ」といった同質性を要求してきました。「みんなと同じ、周りと同じであれば安心」といった考え方です。反対に「違いのあるもの」「異質なもの」は、みんなと違いを持つもの、異質なものを持つ人として排除し、差別してきました。そして、この慣習は私たちの心の中に潜在意識として存在するものです。明らかな人権侵害ではないでしょうか。私たちは自らの心の中のこの異質なものを持つ人を差別し、排除する心を捨て去る努力をすることが、真の人権社会を築くもとであることを知るべきです。




(2)みんなと一緒

みんなと一緒  「みんなと一緒」といった同質性重視の考え方は、異質なものを排除し、差別するという人権侵害を引きおこします。わたしたちは、自分の心の中に潜む差別意識と向き合い、まず、自らの差別意識を自覚し、偏見や差別意識を持たないようにすることが大切です。性が違う、障害がある、皮膚の色が違うといった「違い」をそれぞれの特性として認め合い、互いの個性を重視するものの見方、考え方をすることが大切なのです。「ひとりひとり違う」という互いの差異を認め合いながらともに協力して生活できるようになったとき、人権社会が構築されるのです。

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