親のための子育て経験談集 
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2 発達の課題について

  人間の発達を考える際に、氏か育ちか、つまり遺伝による影響が強いのか環境による影響が強いのかということことに長年にわたり関心が持たれてきています。ことわざにも「カエルの子はカエル」、「瓜のつるになすびはならぬ」という遺伝説と「トンビがタカを生む」という遺伝ではなく環境説の意味のものの双方があります。つまり発達は遺伝と環境が相互に影響し合って進むものですが、要素によって遺伝的影響が強いものも環境的影響が強いものもあります。たとえば身長などは遺伝的影響を強く受けます。一方、汗腺の数は生後2年位の環境の影響を強く受けます(赤ちゃんの頃にエアコンで温度を一定にしてあまり汗をかく経験をしないと汗腺の数が少なくなります)。
 私たちの顔が一人一人異なるように、子どもの発達や成長には個人差があります。けれども大きな視点でみるとおよそこのように人間の子どもは発達をしていくという共通の道筋も見えてきます。その時々の発達の課題と言われているものもあります。エリクソンによる子ども時代の発達の課題について表に示してあります。それぞれについて簡単に説明しましょう。                                                                                                                                  

@乳児期(誕生から15ー18ヶ月くらいまで)
 この時期に大切なことは養育者(母親もしくはその代理者)との基本的な信頼感の獲得であり、不信感の克服です。人間の赤ん坊はその生存に必要な世話を全て養育者に委ねています。乳児の成長に応じて対応してくれる養育者との絶対的な信頼感を伴う関係は後の全ての人間関係の基礎ともなります。

A幼児期前期(15-18ヶ月くらいから3-4歳位まで)
 「自律性」対「恥・疑惑」という発達課題は、それまでほぼ一体に近かった養育者との関係から、子どもが次第に自立していく事が課題となります。この時期は子どもが身の回りのことを自分で出来るようにもなってきます。とくに排泄習慣の自立に象徴されるように、子どもは養育者から「しつけ」という形でルールや秩序を守ることを求められるようになります。またそういうことに失敗すると恥ずかしいという体験もしていきます。排泄を自分でコントロールする(自律する)ことにより、世話をされる自分ではなくなり、養育者からの自立の方向へ向かうのです。

B幼児期(3-4歳から6歳くらいまで)
 この時期は子どもが入園などの最初の集団生活を体験する時期にあたります。大多数の子どもがそれまでの慣れ親しんだ家庭という場から、親以外の大人がいて、また自分と同じ年齢の子どもがいる集団に入っていきます。そこで同輩と社会的な関係を結ぶこと、また自発的・積極的に遊ぶこと、また集団遊びをする中で、自分の思うようにはならないこと(=相手にも意志や要求があること)を体験し、要求を阻止や制止される経験を通して、他者と折り合う(協調する)ことを学んでいきます。またルールを守らないことを制止されることなどから、罪悪感も感じるようになってきます。

C児童期(小学生時代)
 この時期の子どもは、入学という形で最初の学校生活を送るようになります。教師や仲間と過ごす中で、勤勉に学習することを学びます。また他者と自分を比較することや、学習の達成状況を評価されることなどから、自分の苦手な事に対しては劣等感を感じるようになります。

D青年期(中学生くらいから若い成人の時期まで)
 青年期は「自分が何者であるのか」、「自分がやりたいことな何なのか」、「社会の中での自分の位置づけは?」などという問いに対する答えを模索する中で、自分らしさ(アイデンティティ)を確立していく時期です。この自分らしさの確立という課題が上手く達成できないと役割の拡散状態となり、自分がどう生きたらいいのかという答えが見つからないまま、葛藤が大きくなったりします。

 表1 子どもの発達課題(エリクソンによる)

  肯定的 否定的
T 乳児期     基本的信頼 基本的不信        
U 幼児期前 自律性 恥・疑惑
V 幼児期 積極性 罪悪感 
W 児童期 勤勉性 劣等感
X 青年期 アイデンティティの確立     役割の拡散    
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