親のための子育て経験談集 
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第1章 今、家庭では

1 子どもの発達と親の役割

   私たち人間は、ヒトとして生まれ、人と人の間で育っていく中で『人間』になっていくといわれています。生物学からみれば私たち人間も哺乳動物の一種です。でも人間は他の哺乳類と比べると大きく異なっています。人間に一番近いとされている類人猿(ゴリラ・チンパンジー・オランウータン)と比べると、特にチンパンジーとヒトとは98%近くを遺伝的には共有していると言われていますが、その異なっている部分はとても大きいものです。
 大多数の哺乳動物にとって出産はそう困難なものではありません。たいていは母親が一人で出産をし、産後すぐに動き回ることができます。私たち人間はそうではありません。人類の長い歴史をみても、出産は母親一人で行うものではなく介助者がついています。人間の出産が楽なものではなく、医学が進歩する以前(たとえば江戸時代など)は出産やそれにまつわること(流産、死産、難産など)で命を落とす女性達がたくさんいました。他の動物と比べて人間の出産が困難であるのは、母体の大きさの割に生まれてくる赤ん坊の大きさが大きいからです。大人(成体)の大きさと出産直後の赤ん坊の大きさの比をとると人間の赤ちゃんは断トツに大きいのです。たとえば成体の大きさが100kg近くあるゴリラを例としますと、妊娠期間は人間とほぼ同じですが、赤ん坊の生下時体重は1700〜1800g位です。人間の赤ちゃんはこの倍近くあります。これは私たち人間の赤ちゃんがとても大きな頭(その中に入っている大きな脳)を持って生まれてくるからです。そしてこの頭の大きさを優先させているため、頭から下の身体の部分はとても未熟な状態で生まれてきます。類人猿の赤ん坊が生まれてすぐしっかりと母親につかまることが出来るのに対して人間の赤ちゃんは運動機能的にはとても未熟です。そのために生後すぐから養育者(たいてい母親)による世話が必要になるのです。
 また寿命が長く、子ども時代が長いことも人間の特徴です。あらゆる動物の中で人間が一番成人になるまでの期間が長いのです。すなわち人間はとてもゆっくり大人になっていきます。その長い子ども時代を家族や社会集団の中で様々な体験をしながら育っていくのです。

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