いろいろな人権 『障害者の人権』 
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障害者の人権

(3)障害者の生活

同居者・配偶者の有無  厚生労働省が平成12年から平成15年に行った調査によれば、18歳以上の在宅障害者は、「同居者有り」が80%以上です。そして、身体障害者では、配偶者有りが60.6%に対し、知的障害者は2.4%にしかすぎません。知的障害者は、96.6%の人たちが家族又は親族と同居して生活しなければ生きていけないという状況です。そして、ここから知的障害者のさまざまな悲劇が生まれるのです。

(4)踏みにじられた障害者の人権

  <1>1996年9月、知的障害のある女性(当時22歳)が、近所に住んでいる叔母に殺害されました。この女性には1千     万円もの生命保険が掛けられ、受取人は、女性の世話をしていた叔母さんでした。
 <2>水戸市のダンボール加工会社で働いていた女性の知的障害者たちが、社長から暴力や性的暴行を日常的に受けて     いたことが障害者の訴えで発覚した。
 <3>中学生の知的障害を持つ女児が、父親に犯され、その後も日常的に性的虐待を受けていて保護された。
 <4>年老いた母親が、障害のある我が子の将来を悲観して心中を図った。
障害者、特に知的障害者は、その社会生活の困難さ故に、人権を踏みにじられことが多いのも現実なのです。

(5)障害者の相談機関、相談相手

障害者の相談機関、相談相手  さて、我が子に障害があるとわかった時、その親はどこに相談するのでしょうか。厚生労働省の調査によれば、身体に障害がある子の相談機関として利用頻度が高い順に、@病院・診療所、A児童相談所、B福祉事務所、C保健所、D教育機関となっています。また、知的障害児については、@会社の人、学校の先生、A医師、B友人・知人、C専門機関の職員、D障害者の団体という順になっています。ここには、我が子が障害児とわかって親があちらこちらの相談機関を、わらにもすがる思いで訪ね歩く姿が目に浮かびます。これをみても、障害児の子育ては、乳幼児期から、保健、医療、福祉、教育等の関係機関が一体となって保護者や障害児に対する支援のネットワークづくりが必要であることがわかります。

(6)障害者の就業

ア 身体障害者の就業形態
身体障害者の就業形態  「障害者が、社会の対等な構成員として人権を尊重され、自己選択と自己決定の下に、社会のあらゆる活動に参加・参画するとともに、社会の一員としてその責任を分担する」という基本的な考え方は、平成14年2月に閣議決定されたものです。しかし、現実に障害者が自立できるためには、職に就き収入が得られなければなりません。身体障害者の就業状況をみますと、常用雇用は41.2%、自営業・家族従業者として働く人が24%、あと臨時雇、授産施設で働く等が14.2%となっています。

イ 知的障害者の就業形態
 知的障害者の就業形態は、常用雇用は僅か23.8%に過ぎず、授産施設、作業所等で働く人が53.8%の多数になっています。それぞれ障害の程度による違いはあるにせよ、知的障害者の場合は、働く機会が非常に少ないのが現実です。

(7)障害者の労働収入の状況

障害者の労働収入の割合  こうした就業状況から、障害者の得る労働収入は健常者と比べ、非常に少ないことがわかります。グラフをご覧ください。常用雇用者でみると、一般労働者が月額28万円なのに対し、身体障害者は25万、知的障害者は12万、精神障害者は15万です。しかも、福祉工場で働く人は、身体障害者19万、知的障害者9万6千、精神障害者8万1千円という収入しか得られていません。授産施設で働く人においては、月に1〜2万円という収入にしか過ぎません。これでは、障害者がどうやって自立して生活できるのでしょうか。

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