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カネト
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◆
測量人夫になる迄
それから、しばらくたった夏の午後。カネトが土手を歩いていると、地平線の向こうから、ポーポーと聞きなれない音がした。音の方をのぞいて見ると、大きな鉄の化け物がカネトの目の前で蒸気を吐き出した。
「ひやっ」
思わずカネトは飛び上がった。ふねけけのからのようになったカネトをそのままに、蒸気機関車は夕焼けの空の向こうに、一切れの煙を残して消えていった。カネトと蒸気機関車の初めての出会いであった。
カネトは、初めて蒸気機関車を見たときから、毎日のように旭川駅に出かけた。何かに突き動かされる気持ちになってくる。そして、鉄道で働きたいと思うようなった。
カネトは、初めて蒸気機関車を見たときから鉄道で働きたいと思っていた。そのことを担任の善導先生に相談したら、先生はカネトのために紹介状を書いてくれた。
その紹介状を持って、測量人夫を募集している鉄道事務所へ向かった。係りの事務員がカネトに言った。
「ほう、アイヌのガキか。ためしにそのトランシットを担いでみろ。」
トランシットはずしんと重い。
「それを担いでい山を歩くのだぞ。できるか?」
「はいっ。」
ふらつく足を踏ん張って大きな声で答えた。こうしてカネトは仕事につくことができた。
映像を見る・・・<約1分49秒>
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