◆ 少年時代の日々(続き) |
|
 |
しばらく肩をふるわせていたカネトは、草むらにうつぶせになっているうちに、眠ってしまった。野の花のあまいかおりが風に乗って、カネトを眠りへと誘っていたのだった。
| |
|
夕日が沈み、あたりが暗くなると、あちらこちらに家のランプの灯がともり始めた。 教室から逃げ出したカネトを林まで迎えに来るのは、モノクテであった。 モノクテは、大またでまっすぐ歩いてくると、「ばかやろう。なんてざまだ。シャモの子に馬鹿にされて、学校を逃げ出すとは、情けない野郎だ。それでも、お前は第八代目の川上アイヌの酋長になれるというのか。お前は一族の長として生きていくのだ。一族の長がそんなへっぴり腰でやっていけるか!!」と、両手を広げて怒鳴った。
|
 | |
|
 |
夜になると、母は家族のそばでムックリを吹いていた。 母の吹くムックリを聞いていると、原野を獲物を追って駆け巡った遠い先祖たちの声が伝わってくるようである。
| |
|
映像を見る・・・<約1分17秒> |