ことばの万国博覧会 ヨーロッパ館 
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ドイツ語−格変化とテニヲハ−  (講師:宮原勇)


宮原勇先生

宮原勇先生

 ドイツ語は日本人にとっては比較的学習しやすい言語のひとつではないかとよく言われます。それはドイツ語がローマ字の読み方と似ているからです。ですから、ローマ字的に読めばいいと思いますが、それが学習の邪魔になる場合もあります。


<発音>
 母音の発音は以下のようになります。
a 口を大きく開いて「アー」「ア」
e 唇の両端を引いて「エー」。日本語の「エー」より「イー」に近い。短音は日本語の「エ」の要領で。
(ただし、アクセントのないeはあいまいで弱めの「エ」)
i 唇の両端を左右に引っ張って「イー」「イ」
o 唇を丸く突き出して「オー」「オ」
u 唇をとがらせて「ウー」「ウ」
ä 口を広めに開いて「エー」(ただし、短音はeと同じ音)
ö 唇を丸く突き出して「エー」「エ」
ü 唇をとがらせて「イー」「イ」

・母音はふつう、子音字1つの前では長く、子音字2つ以上の前では短く読まれます。
・アクセントのない母音は、ふつう短く読まれます。
・母音の後のhは発音されず、直前の母音が長く読まれます。

 aouの上に点が2つ付いていますが、これはウムラウトと言います。 母音字がふたつ続く場合は二重母音と言い、ローマ字読みではありません。ieは「イー」と延ばす音になります。eiは「エイ」という発音になりそうですが、「アイ」と発音します。auは「アウ」よりも「アオ」に近い音になります。euは「オイ」と発音します。äueuと同じで「オイ」と発音します。
 子音にも独特の発音があります。いくつかあるので全ては紹介できませんが、例えばの発音が独特です。ドイツ語のrの音はのどの奥に強く息をあてて「のどびこ」を震わせて出します。江戸っ子の「べらんめえ調」のように舌を震わせて出す方法もありますが、それは下品なのであまりしません。


<基本的な言葉>
「おはようございます」 Guten Morgen (グーテン モルゲン)
「こんにちは」 Guten Tag (グーテン ターク)
「こんばんは」 Guten Abend (グーテン アーベント)
「おやすみなさい」 Gute Nacht (グーテ ナハト)
「さようなら」 Auf Wiedersehen (アウフ ビーダーゼーエン)
Auf Wiederschauen (アウフ ビーダーシャウエン)
Auf Wiederhören (アウフ ビーダーヘーレン) ※電話で
「ありがとう」 Danke schön (ダンケ シェーン)
Vielen Dank (フィーレン ダンク)
「すみません」「ごめんなさい」 Entschuldigung (エントシュルディグング)
「どうぞ」 Bitte (ビッテ)

 「さようなら」は“Auf Wiedersehen”と言います。普通は習わないのですが“Auf Wiederschauen”とも言い、“schauen”は英語の“show”みたいなもので、「またお目にかかりましょう」という意味です。おもしろいのは電話で言う場合です。“Wiedersehen”の“Wieder”は「再び」、“sehen”は「見る」という意味ですが、電話の場合は見ていないわけです。ドイツ人は理屈っぽいので、見ていないのに「また見ましょう」とは絶対言いません。“Auf Wiederhören”「また聞きましょう」と言います。それから“Bitte”という言葉は「どうぞ」や「‐‐‐してください」という意味なので、物を買う時に“Bitte”と言えば通じます。この言葉はよく使います。


<名詞と格変化>
 名詞にはそれぞれ男性、中性、女性のいずれかの性があります。これは自然の性、要するにメスかオスかではなく、例えば花は女性、木は男性というように決められているわけです。下に例を挙げておきます。その性によって定冠詞が決まってきます。男性名詞にはder、中性名詞にはdas、女性名詞にはdieが付きます。
(例)
男性名詞(der) 中性名詞(das) 女性名詞(die)
Vater 「お父さん」 Kind 「子ども」 Mutter 「お母さん」
Onkel 「おじさん」 Mädchen 「少女」 Tante 「おばさん」
Tisch 「机」 Fenster 「窓」 Tür 「ドア」
Baum 「木」 Blatt 「葉」 Blume 「花」
Staat 「国家」 Dorf 「村」 Stadt 「町」

 さらに定冠詞は格によって変化します。格というのは簡単に言うと、日本語のテニヲハにあたる部分です。つまり「私」とか、「だれだれ」とか、「何々」とか、「何々」といったもので、そういった区別がドイツ語の文章の中には定冠詞の格変化という形で意識的に表示されるようになっています。 定冠詞の付いた名詞は以下のように変化します。
男性名詞
「その男性」
中性名詞
「その子ども」
女性名詞
「その女性」
複数名詞
「その子どもたち」
1格(…ガ)  der Mann  das Kind  die Frau  die Kinder
4格(…ヲ)  den Mann
3格(…ニ)  dem Mann  dem Kind  der Frau  den Kindern
2格(…ノ)  des Mannes  des Kindes  der Kinder

 日本語の助詞と絡んで頭に入れるとよく分かります。英語ではこういう表示がないというか、消えてしまっているのでしょうが、意識されません。ドイツ語の文章は何格であるかをきっちりと意識して読まないと文章全体でどういう意味を持つかが分からないわけです。そのことが英語を勉強した人がドイツ語を習い始める時に意識しなければいけない点だと感じています。
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