太る原因とメカニズム
最初に、私達がなぜ太るのかを見ていくと、倹約遺伝子説があげられます。人類の歴史の99%は飢餓との戦いだと言われています。その飢餓を乗り越えて、子孫を残すため、進化の過程で余分なエネルギーを蓄える能力を持つよう遺伝子がセットされているのです。3万数千あるヒトの遺伝子のうち40種以上が太る能力(肥満)に関係していると言われています。つまり、太る人間は進化し、サバイバル能力に優れているということであり、逆に「やせの大食い」と言われる人は、太る遺伝子の働きが鈍いということです。つまり、私達は基本的に余分なエネルギーを溜め込むように身体に遺伝子が組み込まれているということなのです。
次に、太るとはどういうことでしょうか。体は、生命維持に必要なエネルギー以外の余分なエネルギーを中性脂肪に変えて脂肪細胞として蓄えます。太るということは、必要な蓄え以上にエネルギーを取り過ぎて脂肪細胞が肥大することと言われています。これは非常に単純なことなのです。要するに、私達が生きるために必要なエネルギー以上に多く取っても、動いて消費すればいいのです。取るエネルギーと使うエネルギーのバランスがとれていれば、基本的には太らないと言われているのです。しかしながら、私達の今の社会は、動かなくてもすむようになってきています。
では、なぜ太り始めたかということですが、戦後の食生活や環境が大きく変わったことがあげられます。炭水化物中心の食事から高タンパク、高脂質になる一方、24時間営業のファーストフード店やコンビニが普及し、高カロリーのスナック菓子、炭酸飲料も蔓延(まんえん)しています。さらに交通網・自動車の普及で運動しなくて移動ができるようになり、仕事や受験などでストレスはたまり、食べて解消する人も増えています。飢餓から解放されて肥満への誘惑は強くなるばかりなのに、何百万年もかかってつくられた体質は簡単には変えられません。倹約遺伝子を持っていることが裏目に出てしまったというわけです。