そうすると国や県や市町村のそれぞれの立場がいろいろ出てきます。システムの指針の策定、側面的支援、システム開発経費などを支援していたのが国側になります。情報の整理、蓄積が県側で、情報登録やその情報を元にした相談活動、または講座の開設は主に市町村ということになります。他にもありますが、これが基本的な枠組みになると思います。
ただ、このように動いている市町村にとって、自分だけで全て解決できればそれで終わりで、県まで上げる必要はないのではないかという話が出てきそうです。しかし、ここが先程のもう1つの課題として、多様化、高度化といわれる後の広域化、「連携」と言った方がいいかもしれませんが、そういう事になると思います。
そういった取組みを進めている地域は全国に点在しています。
例えば、近隣の市町村が連携し、まず講座を他の町の住民でも受講可能にしていきます。そうすると同じような講座がA市とB市の両方にあって距離も近い場合、内容を検討し、A市はこの内容を中心にして開催し、B市は別の内容を中心にするというように、連携によって多様で高度なメニューを用意できる事があります。広域化という大きな課題を見越してシステムが作られているので、自分の市や隣の市の活動内容が全部公開される事により、近隣の市町村と連携して講座を開講する事ができます。そういった連携なしでは、これからの生涯学習はやっていけないのではないかという意見もあり、大きな課題になっています。
現在はインターネット上で、国が「まなびねっと」という形で全体を取りまとめており、そういう動きの中でお互いに活動内容を互換することができます。ある市町村がE−ラーニングを始めれば、物理的にその場所へ行かなくても学習ができるので、より広域的な話になるのかもしれません。従来は実物の資料、講座一覧、パンフレットなどの二次情報を使いながら、それをコンピュータへ入力するような作業が行われていましたが、現在は直接入力すればいいという形になってきています。
従来の学習情報は、広報的なものや相談活動の資料の1つとして使ってきましたので、提供方法はどちらかというと県の方から降りてくるイメージでシステムが使われていた部分があります。しかし現在は双方向ですので、どちらかというと、システムを通して互いに、広域的にコミュニケーションができるというようなところにウエイトが移りつつあると思います。それによって、プライバシーなどのいろいろな事への配慮が、今まで以上に必要な部分が、当然出てくるようになります。
現在のシステムは、いろいろな人たちが実際に情報を登録する事を可能にしています。当然マルチメディア化もあげられますが、広域的なネットワークをどう作るかは、インターネットで物理的には解決しています。住民参加、または市町村参加などを含めての学習情報システムを自分たちで開設したいところもあるでしょうが、管理や運用には大変なコストがかかります。
最近、企業はASP(アプリケーションサービスプロバイダ)を利用し、いわゆるアウトソーシングで運営している場合もあり、そのシステムを1つ買っても、設計して動かすのに何千万、何億単位で費用がかかり、維持費、補修費もかかるので、また結局は外へ出してしまうという動きが出ています。市町村と県という役割分担がうまくできれば、そういったことは県に任せて、市町村は使わせてもらう立場で動くという形が現在の動きとして出てくると思います。