昭和56年頃から中央教育審議会で生涯教育の推進がいわれています。それに対し、現実に多様化、高度化してくる学習に対して一体何をしていけばいいのでしょうか。課題として学習情報の提供、また相談を受ける体制の充実などがあげられます。いわゆる情報通信の技術を使っていくということも考えられるようになってきました。
その経緯として、まず学習情報の提供システムの整備が、当時の文部省によって昭和62年から始まりました。これはどちらかというと都道府県に整備しましょうということになりました。現在のようなインターネットは最初からは施行されていませんでしたが、各都道府県をヘッドにし、情報通信のネットワークを使って市町村の情報も共有し、県内全体に広域提供するという考え方で、情報収集や提供システムが開発、構築されるようになってきております。生涯教育のシステムの一部として、それを支える1つのしくみとして機能するようになることが現実に行われてくるようになってきています。
現在は、整備に関する事業はだいたい終わり、次の段階に入っています。1987年(昭和62)から始まり、1997年で全国の42都道府県で整備が完了しています。県が取りまとめをしますので、県に全体のシステムを置くことになりました。大型のコンピュータを置いて情報を収集し提供する、そしてその端末を市町村に置くというようなイメージです。1997年当時、システムに参加している市町村数が1,678、全体の都道府県の中57.9%、置かれている専用端末は約4,000台でした。平均のデータ件数は1都道府県あたり約23,000件、平均利用者は年間約18,000〜19,000人であるといわれていました。
次の段階に入ると「まなびねっと」という形で全国をまとめることになります。これが2000年でしたので、既にインターネットが利用できるようになっていました。
以前に整備したシステムを持っているところは、どうやってインターネットに切り替えるかということを考えました。それと同時に提供できる情報を、早めに整備したところは、ほとんどが文字や数字だけの情報に終わっていたと思いますが、現在は当然のように写真や動画があったり、あるいはビデオそのものが入っていたりします。いわゆるマルチメディア系の方向に全体のシステムが動いてきているということです。従来のところの多くはいわゆる案内情報ですが、案内情報だけは全国的に整備しましょうというのが先程の情報ネットワーク、生涯学習情報ネットワークの適用システムでした。
それから、学習情報をデータベース化することが始まりました。学習情報を収集、整理、蓄積してそれを提供していくのです。一元的に各市町村で行うよりも都道府県単位で行い、情報の集合体をデータベースとして考えることになりました。それによって、先程の2万何千件というデータも簡単に検索できるのです。
実際そのためには、いろいろなシステムの管理が必要ですし、どういう領域をつけてデータを分類するかという事も重要になります。ほとんどは情報通信を利用して、データベースをいろいろなところから利用できるようにするという動きになっていたと思います。
第1期の生涯学習情報提供のシステムは、案内情報を使いながら、生涯学習関係者が検索して、利用者に「こういうチャンスがありますよ」というような相談活動として行うという意味もありました。あまり利用者に直接情報を提供するということには配慮がされていなかったという所もあります。もう1つ大きな情報のタイプとしていわれているのがファクト情報と呼ばれているものです。その情報を見れば学習を進められるタイプのものです。
実際にはマルチメディアなどを使わなくても、書店にある百科全書などを見てその内容を理解する事や、理解を深める事はできるので、われわれの周りにはそういう学習情報があふれているという事になります。こうした情報も含めながら提供されるようになってきているというのが現状までの歩みだと思います。