新大陸の古代王朝(1) 中米古代王朝の国家宗教と政治 
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羽毛の生えた蛇神殿


羽毛の生えた蛇神殿の石彫

羽毛の生えた蛇神殿の石彫
 テオティワカンのモニュメントには、城壁と呼ばれる大きな儀式場があります。大きさは400m×400mくらいあり、ここで儀式が行われた時はここの町の住人、10万人から15万人がすべてここに入るほどの大きな儀式場になります。その中心神殿が羽毛の生えた蛇神殿といいます。ここのピラミッドは壁が四方とも全面羽毛の生えた蛇の像、蛇神が彫られている石彫で覆われているのでそういう名前がついています。ここの調査は80年代に大規模に行われました。
 太陽のピラミッドや月のピラミッドと比べると、スケールは小さくなりますが、それでも一辺が65m×65mあります。だいたい真四角ですが、ここのピラミッドは表面が石彫で覆われています。それぞれの切石はかなり大きくて、数百kgから何tもあります。このような石彫で四方が覆われている複雑なもので、いろいろな解釈の余地が出てきますが、これが羽毛の生えた蛇神に捧げられたということは確かです。
 このピラミッドは全体として羽毛の生えた蛇が頭飾り、つまり王冠を持ってきていることを表すというふうに考えています。したがって神が自分の権力の象徴である王冠を持ってきているというものを、当時の王が描かせているのです。神から与えられた王権を正統化するための王冠というわけです。
羽毛の生えた蛇神殿・埋葬体

羽毛の生えた蛇神殿・埋葬体
 羽毛の生えた蛇神殿からは墓がたくさん見つかりました。いけにえにされた戦士の墓がたくさん出てきました。図のような形です。これも暦の数になりますが、男性18体、女性8体がこういう形で南側、北側、西側、東側という形でいろいろなところから墓が出てきました。これがこの神殿を造る時にいけにえにされた人たちが埋もれた墓です。これはその時の王が、戴冠式をするための神殿を造らせて、日本でいう人柱のような形で神聖なものを造るときに戦士を埋めていたわけです。これが誰だったかはっきりわかりませんが、骨の分析からテオティワカン人ではなくて、外から連れてこられた人たち、恐らく戦いで負けた捕虜等が集団で、このように象徴的な形で埋められていたと考えられています。これも形式は非常に宗教的なものですが、当時の権力者の政治力と国家を支えた戦士集団の重要さを示すものといえるでしょう。



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