新大陸の古代王朝(1) 中米古代王朝の国家宗教と政治 
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メソアメリカ


 始めに新大陸の古代文明はどういう形で発展してきたのかを簡単に説明します。アメリカ大陸に初めて辿り着いたのはモンゴロイドです。ベーリング海峡を渡って、1万2千年くらい前には新大陸への移民が始まったといわれています。これは氷河期のちょうど終わり頃になりますが、氷河期というのは非常に気温が下がって、降り積もった雨や水が氷になって、それが完全に溶ける前にまたその上に降り積もる、ということをずっと繰り返した時期で、それが長い間続きました。地球全体の水の量は同じですから、水が氷になって、海水が60mから100mくらいまで下がる時期がありました。そうするとベーリング海峡はそれほど深くないので陸続きになり、その時期にいろいろな動物が渡り、それを追って人間も渡ってきたわけです。当然、新大陸に足を踏み入れたということを自分たちは知らなかったわけですが、そういう形でアメリカ大陸に初めて人類が渡りました。人類史を百万年、二百万年という単位で考えると、最後の1万年になって初めて新大陸に人が渡ったということです。ちなみに日本大陸も氷河期に中国や朝鮮と陸続きになり、その時に人が渡ってきました。それ以前に渡ったという説などいろいろありますが、少なくても3万年、4万年くらい前に渡っています。
 新大陸に1万2千人くらい渡るとそれ以後、平原地帯にベーリング海峡を渡って、シベリアの方から人が入ってきました。一旦平原に入ると、1千年くらいの間に南米の一番南の端まで人の跡が出てきます。こういう形でコロンブスが渡ってきた時には、もうすでに新大陸はどこも人が住んでいました。
 高い文明を誇っていたのはこれから私がお話ししますメソアメリカと呼ばれるメキシコ・ユカタン半島、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、この辺りになります。非常に高い文明を持っていて、特に天文学、数学、非常に複雑な暦の体系、太陽の周期から月の周期、金星の周期、日食の周期も割り出していたというデータもあります。そういった知識といろいろな神々、つまり非常に複雑な宗教体系が存在していました。そしてそれに伴う神話、いろいろな世界創造神話、そのためのいけにえの儀式など様々な宗教儀礼を行っていました。こういったものを共有する文化がこのメソアメリカになります。
 メソアメリカは紀元前1万年くらいに人が渡って、紀元前7千年くらいから農耕が始まりました。このメソアメリカとアンデス領域が文明の発達したところですが、農耕が一番初めに発明されて、それが基盤となって宗教センターや土器を発明するわけです。このメソアメリカとアンデスが今のところデータでは一番古くなります。そして紀元前1千年くらいから大きな宗教センターができて、その周りに人が大勢住むようになり始めて、都市が出来始めます。そして都市を基盤とした大きな政治機構、つまり国家が出来始めるのが紀元前後くらいです。この時の一番大きな都市がテオティワカンになります。このテオティワカンは紀元後200年くらいには10万人から15万人の人が住む大都市になりました。日本がようやく弥生時代に集落をつくっていたという時代には、既に大都市を造っていたわけです。ちなみに農耕はトウモロコシ、インゲン豆、カボチャ、トマト、様々なイモ類、こういったものがすべてこの新大陸で栽培されて、それがヨーロッパ人に発見されて、それ以後伝わってきたものです。あとチョコレートやタバコ、チリペッパー、こういったものもすべてこの新大陸から持ち込まれた栽培種になります。

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