天文学への誘い、大宇宙の誕生 
もどる  目次へ   すすむ  
「なんてん」から「NANTEN2」へ

 最新の観測はどうなっているのかを説明しようと思います。私たちは10年ほど前、「なんてん」という電波望遠鏡を使って、おうし座の星の卵の研究をしていました。そして北の空はかなり調べつくしたので、同じ望遠鏡を南半球の南米チリに持っていったのです。それが1996年のことです。
天の川
「なんてん」が見た天の川全景
 上の地図を見てください。これが今の人類が手にしている世界最高の、星を生み出すガス雲の地図です。これ以上のものは世界にはありません。なぜ南米チリに持っていったのかというと、こういう地図を作りたかったからなのです。日本は、宇宙の観測をする場所としては世界最悪の部類です。何故なら雲が多いからです。日本の天気予報は雲が半分くらいあっても、晴れだと言います。しかし天文学上では全然晴れではないのです。チリは本当によく晴れていて、空が澄みわたっています。年間7割くらいはほとんど雲の無い、本当のブルースカイであり、晴天率が非常に高いということが理由の1つです。それからもう1つの理由として、南の空というのは、なかなか研究が進んでいなかったということがあります。やはり北半球にいろんな文明国が集中しているため、高性能の機械は北半球に多く存在しています。そのため、北の空の研究は進んでいたのですが、南の空に何があるかというのは本当に手付かずだったので、ぜひ、これは南半球でおうし座の観測をさらに拡大してやっていこうと思ったわけです。
NANTEN2移設予定地
NANTEN2移設予定地
 そして、ラスカンパナスという標高2400メートルの天文台で7年間観測してきました。南の天の川の地図も、マゼラン銀河も非常にきれいに観測できたので、さらに難しい観測に挑戦しようと今準備をしています。そのためには標高2400メートルのラスカンパナスでは駄目なのです。さらに高いところに持って行かなくてはいけないということで、「NANTEN2」移設予定地が標高4800メートルのアタカマというところになります。本当に草も木もあったものかという、実に見事な乾燥地帯で月の表面みたいな感じです。ここに、これから望遠鏡を持って行きます。そして、主鏡面を3倍以上性能の良い、新しいものに取り替えます。そうすると、今までは波長3ミリメートルを観測していたのですが、波長数百ミクロンという、0.*ミリメートルというサブミリ波で宇宙を見ることができるようになります。
「なんてん」
「なんてん」
これは大変新しい世界です。この天の川全体の地図は、摂氏マイナス260度ぐらいのガスの分布を示しているのですが、この中に実は100度や150度の領域があるはずなのです。それが1本のスペクトルだけではよく分かりません。しかし、これがサブミリ波で、0.*ミリ、あるいは数百ミクロンという電波をみると、正確に温度を測定したり、あるいは重さを測定したりということができます。それをこれからやっていこうと、我が名古屋大学が進めているところです。

もどる  目次へ   すすむ