天文学への誘い、大宇宙の誕生 
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星の誕生−星の卵・星の赤ちゃん−

 さて、ここから星の誕生の話に入っていきたいと思います。重力の影響で集まったガスの塊、つまり星の卵は、50万年ぐらいかかって小さくなっていきます。その過程で中心に星の赤ちゃんが誕生するのです。
 星の卵というのは、少しずつ回転しています。そして、段々縮んでいきます。そうすると回転の運動は、いつまでも残っているのです。例えて言うと、フィギアスケートの選手が回転していて手を縮めると、回転スピードが早くなります。あれは角運動量の保存則とよばれるものです。つまり、回転する成分は消えずに、小さくなればなるほど回転するスピードは速くなるということです。星になる時はどんどん小さくなるのです。小さくなってスピンアップすると、あるところで遠心力が非常に強くなり、重力と同じぐらいになります。そうなると軸に対して真横の成分というのは、遠心力が外向きに働いて外に引っ張られるため、ガス全体はパンケーキのように潰れていきます。それが円盤を作る元になるわけです。そして、星の赤ちゃんを中心に円盤がその周りを取り巻き、上下にはジェットが2つ飛び出していきます。片方は遠ざかっていくガスが、反対側には近づいてくるガスが伸びています。
 星の赤ちゃんというのは、100万年ぐらいの間に生まれています。100万年というのは長いか短いかと言うと、短いのです。宇宙は137億年の歴史があって、銀河は1回転するのに2億年かかっているわけです。2億年に対してたかだか100万年です。だから宇宙では、星はほとんど瞬間的にできてしまうのです。
 なぜ、こういう星の誕生の様子が観測ができるかというと、これは電波を使うからです。ガスは温度が低いため、光では見えません。どれくらいの温度かというと、摂氏マイナス260度くらいです。あと10度ちょっとで絶対零度になるという、それぐらいの冷たいガスであり、角砂糖1個分の大きさの中に水素分子が1000個くらい含まれる宇宙の高密度ガスです。その中にわずかに含まれる分子が、特有の波長の電波を放っているのです。その電波を捉えて私たちは観測しています。極めて微弱な電波なので、なかなかこれを観測するのは大変です。電波で観測すると何が分かるかというと、例えばこの空の方向からは15、こっちからは20といった、分子が出す電波の強さが分かるわけです。そうすると、それぞれの方向にある強さがいろんな数値で並び、分かりやすく色をつけて、地図ができます。

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