新大陸の古代王朝(2) インカの国家宗教と政治 
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都市=暦クスコの構造


図3 セケ
図3 セケ
 クスコの四つの区分(方角)は、それぞれ三分割され(コリャナ、パヤン、カヤオ)、さらにそれぞれの三区分は三つに細分化されました(セケ)。セケというのは想像上の線です。16世紀の法学者ポロ・デ・オンデガルドは、「クスコの中と周辺にある約400のワカについての記述」を残しています。「これらの場所は、インカの神話や歴史において、何らかの理由により特別な意味を持つ岩や泉や建物であって、いくつかの集団に分けられ、そのおのおのは、セケと呼ばれる想像上の線に沿って並んでいると考えられた。そして、すべての線がクスコの中心に集まると見なされ、これら線上にあるワカの維持と礼拝は一定の社会集団にゆだねられた。」 要するに、クスコにはまず二分割(上下クスコ、つまり、ハナン・クスコとフリン・クスコ)、四つの区画(チンチャイスーユ、コリャスーユ、アンティスーユ、クンティスーユ)、三つのセケからなる集合が12(コリャナが4、パヤンが4、カヤオが4)ありました(図3)。これらの区分は空間的な区分だけでなく、社会的な組織の区分やヒエラルキーにも影響を与えました。
図4 インカの暦
図4 インカの暦
 また、クスコの空間的秩序である都市空間はそのまま時間的秩序を示す暦の構造や祭儀にも影響を与えました。12の月は三つずつ四つの季節に分けることが可能です。各季節に属する三ヶ月は、セケのシステムを支配する三つの概念(コリャナ、パヤン、カヤオ)にもとづくヒエラルキーによって上下関係が定められました。この上下関係は、一年の前半の二つの季節については、時計の針の方向に従い、後半の二つの季節については、時計の針とは反対の方向に従います(図4)。つまり、暦はクスコの都市空間と同じように、基本となる二分割(一年の前半と後半)と四分割(四つの季節)、さらに三分割(コリャナ、パヤン、カヤオ)からなっていました。一年の前半である夏は、太陽の主要な座から始まり、上位を占め、後半である冬は、太陽の副次的な座から始まり、下位を占めます。前半と後半は太陽の祭りが行われる夏至と冬至でつながり、夏至にはカパック・インティ・ライミが、冬至にはインティ・ライミが行われていました。
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