脳は若返る 
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脳細胞はいくつになっても増える


  これまで、脳細胞は胎児の時は増えるが生まれてきたらもうほとんど増えない、特に年を取ったら減るだけだ、と言われてきました。しかし最近では、脳細胞は70歳を過ぎても分裂し、増えることが分かりました。アメリカのカリフォルニア州サンディエゴのソーク研究所で、スウェーデンのエリックソン氏により明らかにされました。エリックソン氏は、ガン細胞が分裂して増えるときに赤い光を出す薬を利用して、脳細胞が増えるかどうかの研究を思いつきました。ただし、そのためには薬を注射した後なるべく早く脳を調べてみなくてはなりませんでした。そこで、50〜70歳代の高齢の末期ガンの患者の方々の所へ行って「今まで脳細胞は増えないと言われてきたが誰も確かめたことはない。この薬を使えばこのことに結論が出る。これはあなたのガンの治療とは関係ないが、この薬を注射させていただき、あなたが亡くなった後に脳を調べさせてはもらえませんか」と協力を依頼しました。すると、自分は余命いくばくもないが皆さんのお役に立てるのならと承諾して下さいました。承諾後ほとんどの方が一週間以内に亡くなりましたが、脳を調べてみたら中に赤い光を出す細胞がたくさんあったのです。こうして脳細胞はいくつになっても増えるということが証明されました。その後、この一連の研究は非常に重要な研究として注目されています。
  私たちの神経細胞は電線のように突起が伸びています。突起が伸びたものはもう増えない訳ですが、私たちの脳の中には幹の細胞のようなものがあってこれが分裂して死んだ細胞を絶え間なく補っているのです。脳梗塞になった時も増えることは増えますが、急速に増える訳ではないので残念ながら機能を完全に回復することはできないのです。それでも脳の中で新しい細胞が増えているということは私たちに大きい希望を与えるのではないかと思います。
 ではもっと脳細胞を増やすにはどうしたらいいかという虫のいい話になるわけですが、どこにその幹細胞があるかといいますと、海馬にあります。海馬というのは記憶の入り口で、短期記憶を長期記憶に変えるところです。なぜ海の馬とかくのかというと、それは形がタツノオトシゴとよく似ているからです。記憶は始め海馬に蓄えられ、それからしばらくして脳のいろんなファイルに蓄えられます。そうなると海馬がなくても大丈夫なのです。だから人間というのは年を取ると新しいことは覚えられないのに古いことはいくらでも覚えているのですね。この海馬の細胞が一番増えていたのです。ではどうしたら脳細胞が増えるか、これには3つあるのです。第一に身体を動かすこと、歩いたりすると非常にいいですね。一番いいのは楽器をやることですね。第二に講演会とか催しものがあったらなるべく出て行く、家族の方も連れ出してあげるということが非常に大事ですね。引きこもってしまうと脳細胞は増えなくなります。第3は頭を使うとことです。勉強するということは、単に神経細胞の突起を伸ばしたり枝分かれさせたりするだけではなくて、脳細胞自身を増やしているということです。そうするとやっぱり勉強してみようということになるんじゃないですか、皆さん。
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