脳は若返る 
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脳細胞の変化


   脳細胞はどうなっているか、また、脳細胞はどう変化するか、勉強が脳細胞にどのような影響を与えるかということをお話しします。
 脳細胞は細胞体と長い突起からなり、この突起によって情報を送ります。例えば、目で見たものは目から神経(脳細胞)を通って脳の後頭葉にある視覚野に送られそこで始めて皆さんが見ることができます。これが楽譜なら、また神経を通って指を動かす命令を出す脳(前頭葉の運動野)に送られます。ところが、子供のときは神経が伸びていないから必要な脳まで送られません。だから生まれたばかりの赤ちゃんの目は見えないのです。重要なことは、神経は電線のように突起を伸ばして、そこを情報が伝わっていくため、その突起が遠くまで伸びていると、目から神経細胞が後頭葉までつながり物が見えるわけです。神経というのは生まれたときには突起が少ないが、生後一年ぐらいになると突起が張り巡らされます。つまり最初は突起の最初の部分にまでしか伝わらなかった情報が、突起が伸びた分だけ後ろの方まで伝わるわけです。ですから先ほど言いましたように見たものが後頭葉までつながると見え、さらに指を動かすところまで行くとピアノが弾ける訳です。神経はいろんなところに突起を伸ばしてつながればつながるほど効率がよくなります。光ファイバーを張り巡らしたような状態といえば非常にわかりやすいですね。
 それから、脳は使えば使うほど効率よくなることが分かってきています。長い間教育を受けて頭を使った人は神経の突起が長く枝分かれも多くなっています。つまり脳がより効率よくなっているわけです。最近の研究によると、長く伸びた突起や枝分かれを持っている人はボケない、ボケる率が非常に少ないということが分かったのです。そうすると、自分の脳がもっと効率よくなってボケないとすれば、誰でもそれじゃあ勉強してみようかということになるわけですね。勉強というのは自分の脳を効率的に長く使うためにするのです。そう思うと必ずしも自分の専門分野でないことでも勉強するということの意味が分かると思います。
 脳は使えば使うほどどんどん良くなります。例えばピアノなどをたくさん練習すると脳の中の指を動かす部分が大きくなってきて、突起が伸びてくるだけでなく神経細胞が伸びてくることが分かっています。あるいは我々が物を指で触って感じる部分は頭頂葉の体性感覚野が活動して然るべきでなんですが、盲目の方が指で物を触って確かめるとき活動するのは、何と後頭葉の視覚野の部分なのです。盲目の方は指で見ているのですね。脳の中では指が目になっているのです。逆に今度は耳の聞こえない方が手話を見ている場合は当然、視覚野が活動して然るべきですが、耳が聞こえる分野、聴覚野が活動しているのですね。つまり耳の聞えない方は手話を聞いているのです。私たちの脳というのは自分が何をどうしたいかによって、絶えず作り変えられています。これは最近非常に重要な研究として注目されています。
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