脳は若返る 
もどる  目次へ  すすむ  
人間は何歳まで生きられるか


 「脳が若返る」ということを話す前に、いったい人間は何歳まで生きられるかというお話をします。それには、何故私たちは老化するかということを知らないといけないわけです。世界中の学者が考えた結果、私たちが老化するというのは、鉄が錆びるように身体が酸化していくということなのです。ところが、私たちは酸素を吸い込まないと一瞬も生きられませんよね。そうすると、生きていくということが老化するということになってしまうのです。それで、この複雑な関係を研究した学者たちが、『人間はどんなに頑張っても、120歳を超えて生きることはできない。』という結論をだしたのです。
 ところが今から10年ぐらい前、フランスのジャンヌカルマンという方が、ついに120歳を超えて122歳5ヶ月で亡くなったのです。皆さんは、何だ2歳5ヶ月増えただけじゃないかとおっしゃるかもしれません。しかし、これは学者たちが、理論的、実験的に120歳を超えることがないと宣言したわけですから、これを超えたということは非常に大事なことなのです。
 そこで人間は歴史的に何歳まで生きられたか少し検討してみようということになりました。スウェーデンという国は長い間一種の鎖国のような国で、1800年からずっと戸籍が完備されています。それで国立統計研究所がその戸籍を全部洗い直してみたのです。すると、1800年代の最長寿は108歳で、1820年代では1歳年上の109歳の人が現れてきました。そして1840年代、また20年すると110歳の人が現れてきたのです。つまり、20年に1歳ずつ最長寿の年齢が上がっていました。ところが、1970年からは10年に1歳ずつ上がってきている。つまり右肩上がりになっているのですね。しかし、120歳を超えることができないということは、120歳に近づくとだんだん頭打ちになってくるということですよね。ところが現実はそうではないのです。右肩上がりなのです。
 世の中の寿命に限界はないのだということを知らせるということは、私は非常に大きな意味があると思います。現在日本の社会は閉塞状態です。例えば、経済はこれ以上伸びないとか人口は減っていく、そういう何か頭打ちという考えは、我々になんとなく面白くないという感じを抱かせるのですね。ですから私たちの寿命は決まりきったものではないのだ、ということは非常に私たちの気持ちを解放させるものだと思っています。

 安岡正篤さんの書かれた本に載っていますが、今から400年ぐらい前に中国に袁学悔といわれた方がいて、ある時、易の奥義を究めた人に自分の運勢を占ってもらうことになりました。すると自分は官僚に向いている、そして官僚になるために受ける科挙の試験の点数と、給料などを教えられ、また、50歳の8月30日に亡くなって子供はできないということまで言われました。袁学悔はそんな馬鹿なことがあるものかと思い、最初の科挙の試験を受けると、占ってもらった点数とまったく同じで給料まで同じでした。まぐれだろうと思い、第二回目の試験を受けると、点数は同じでしたが、給料が少し少なかったのです。ですから、やっぱり当たらないじゃないかと思っていたところ、ボーナスが出て給料も同じになってしまいました。それで、袁学悔は、もう世の中のことはすべて決まっているのだ、じたばたしても仕方がないという気持ちになりました。ところが、ある時、雲谷という和尚さんに呼ばれてこの話をしたところ、「昔からいいことをすればいいことが来る。あるいはいいことを積んだ家にはいいことが来ると言っているけど、もしお前の言うとおりだったら、いいことをしても悪いことが来るかもしれない。悪いことをしてもいいことが来るかもしれない、当てにならないじゃないか。」と言われました。袁学悔は、それではどうしたらいいのかと和尚に尋ねたところ、和尚は、「仏教の教えによると、私たちの運勢というのは、業(ごう)という運命の貯金通帳のようなものがあって、慈悲の心とか思い・行いには業にいい点数を付ける。無慈悲な思いとか行いには、業の貯金通帳に借金を書く。だからできるだけ慈悲の心を持って生きてごらんなさい、そうすれば、運勢の貯金が増えて必ず運勢は変わりますよ。」と言いました。袁学悔は慈悲の心を持つことに努めたところ、その次の科挙の試験では、占ってもらったよりもはるかにいい点数で給料も高くなり、65歳の時に記した本が現在も残っています。袁学悔は、運命はもう決まっているのだ、と言われたときには、空が黒い雲に覆われているようだった。しかし、自分の思いによって運命が変えられるということを聞いてから、一転雲が払われて青空が現れたようになった。実際自分は今65歳だけどまだ生きている、子供はできないと言われたけど二人の子供ができている。これもすべて、仏の正しい教えを受けたからだと言っています。私が今日お話しすることは、これは単に運命の問題だけではなくて私たちの脳、私たちの健康というものは私たちがどう思うかによって変わる。というお話をしたいと思っています。

もどる  目次へ  すすむ