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右の私が作った図式は、様々な要素が絡みあっていることを説明しています。
アンデスの場合には自分たちの古い伝統を再解釈して、新しい技術によって、独自に伝統を再編しているのだということが言えます。
アンデスの先住民社会は、いままで多くのコミュニティを結ぶ全体としての統合の絆が弱かったのです。しかし、これをきっかけにして、新たな統合のシステムができつつあります。しかし一方ではその組織が巨大化しつつあって、官僚化も起こっているようです。
そして、大きな現金収入が急に出てきたことによって、コミュニティの中にも多様な変化が起こりつつあります。これについてはこれからの問題でもあります。例えばリーダーシップの問題にしても、今までのリーダーとは違うリーダーが求められるということが出てくるのです。
また、観光やメディアなどが刺激になって、伝統文化が見直されることは非常に大きいことです。それが再編され活性化されているのです。例えば、インカの儀礼的なことを真似て、また作り出すというようなことです。これは日本の「村おこし」でもたくさん見られます。地域独特の個性や産物を活かしていく。それが無ければ、何かこじつけて目立つ事をやっていく、他の地域との差異化を図っていくということです。アンデスの場合はそれが非常に際立ったかたちで起こっているのです。それから野生動物の合理的利用によって、環境の保全自体も促進されているというような、いろいろな要素が1つの現象の中に絡み合っているということです。
グローバリゼーションというのは、いろいろな側面があるわけですが、まずは経済の問題があり、それから政治的な問題もあります。文化という側面から考えると、グローバリゼーションによっていろいろな人の流れ、そして、文化が国境を越えて影響しあうということがあります。しかし、それは国際文化というかたちで、平準化されていくわけではないということです。
要するに、どこも同じようになるわけではありません。例えば、世界中がアメリカになるわけではないということです。むしろ、こういう現象を見ると、異なる文化が影響しあうことによって、またグローバリゼーションの中で自分たちを見直し、むしろ、民族アイデンティティーの活性化が起こる、ということがはっきりと見られます。
それはアンデスだけではなく、いろいろな所で起こっているのではないか、ということを結論にして講座を終わりたいと思います。 ありがとうございました。