「国際文化」とは?A環境をめぐる「伝統の知」の再編と世界システム 
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はじめに

講座の様子 文化人類学というと、昔は探検のイメージと重なって、辺境の地へ行き、珍しい民族のことを調べて発表するという感じがありました。しかし、今は都市で調査したり、日本の研究をしたりする人もいて、社会学の領域と重複している部分もかなり出てきています。
 私も文化人類学をはじめた頃は、どちらかというと伝統的な部分を知りたいと思いました。ですから、比較的小さなコミュニティで調査をしていましたが、それによって、社会というものを外から全体的に見ることができるのです。私の経験で言いますと、人間の社会はこのようにできているのだという事を、メキシコの先住民、インディオの社会に最初に入ったときに実感しました。それで私は文化人類学のおもしろさを知りました。
 その後、ペルーに2年ほど滞在して、先住民の社会の調査をしました。そこでもやはり、古い習慣を残しているところに関心を持ちました。標高4500メートルくらいのところに、ラクダ科の家畜を飼っている先住民がいます。その辺りはスペインの影響も少なく、インカ時代から続くいろいろな慣習や生活システムが残っていました。
 ところが、やはり世の中がだんだん変わっていきまして、どんな辺境へ行っても、大きな世界の流れと関係した変化が表れています。自然に私の関心もそういうところへ移っていきました。変化を知るには歴史を知らなければいけないということで、歴史的な視点にも大いに関心を持つようになってきました。
 2002年の1月と6月にペルーの山岳地帯で調査をしました。その時に非常におもしろかったのが、ラクダ科の野生動物であるビクーニャを、みんなで追い込んで捕まえ、毛を刈って放すという習慣がアンデスの高原地帯に非常に広まっているということです。
 これは以前にはなかったことです。いつからかというと、フジモリ政権の時代、1993年に初めて行われました。そのときは数十頭しか捕まえられず、翌年も行いましたが0頭でした。試行錯誤の結果、今では何万頭ものビクーニャを捕まえるということができるようになりました。アンデスの広い地域のたくさんのコミュニティで一気に広がっています。実は、これは500年近く昔のインカ帝国で行われていた習慣で、それを現代風に変えて行っているのです。

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