大学をまちづくりの中心に ―リカレント教育がつくりだす人の循環― 
もどる  目次へ  すすむ  
「ひと循環型社会支援機構」のシニアプロジェクト「くるる」


 「くるるセミナー」は「ひと循環型社会支援機構」から生まれた、アクティブシニアのためのセミナーです。少子高齢社会が到来し、人生でもう一花咲かせよう、社会のためにもう一肌脱いでやろうという考えをお持ちのシニアを応援するために生まれました。元気シニアのイメージである「聞く」・「見る」・「する」の語尾をとって「くるる」と呼んでいます。シニアの特に関心の高い「健康」、「パソコン」、「趣味」、「社会貢献(ボランティア)」といったテーマを選び、6種類の講座をスタートさせています。
 このシニアプロジェクトは、今のところ岐阜市内で行われています。1年半で約1500名が受講をされた結果、約500名の方が、岐阜市内で自主グループを作り、いろいろな活動を始めています。一例ですが、以下のようなものがあります。
 ♥ ウォーキングクラブ
 毎月40〜50名の方が集まり、中山道中心にウォーキングをしています。先ず、行き先の下見をして、少しはその町に役立つということで、その地域の店でご飯を食べることが決まりです。ウォーキングをして、健康増進とともに仲間とのつながりを深めることも目的の一つです。また、歩きながらゴミを拾う「チョボラ」ウォーキングもやっています。  
 ♥ ガーデンクラブ(イングリッシュガーデン)
 「くるる」セミナーから生まれたクラブで、寄せ植えを銀行のロビーに飾ったり、また病院でガーデニングクラブを作ったりしています。実際にガーデニング療法は、長期入院の方が、自分の花を育てることによって、早期治療につながることがわかっています。それを勉強しながら、自分が楽しみ、人も楽しませるボランティア活動を始めています。 
素敵生活アラカルト
「くるる」素敵生活アラカルト
©2003 ひと循環型社会支援機構
 なかには、これからシニアベンチャー企業を作りたいと言っている方もいますが、多くの方は当面は、ボランティア活動を中心にしたいろいろな趣味活動とボランティアを合わせた形の新しいグループです。
 いろいろな趣味系の講座をベースにして、趣味グループができています。その中には男性中心のグループがたくさん出来ています。その一つに柳ヶ瀬商店街再生プロジェクトを作ろうという話も出てきています。
 更に、これらのグループに参加されていない方々が、地元に返って、民生委員や老人クラブの会長などを務め始めたということがわかりました。
 このくるるセミナーに出かけて、自分は生き返った、自主グループには、参加しなかったが地元でみんなに頼られると、やらなくてはいけないと思い始めたなどという意見や感想を持たれ、くるるで習ったことをベースにしながら、例えば老人クラブでいろいろな活動を始めたり、民生委員のようなものを引き受け始めているようです。その意味では、シニアの方々自身が自分の生き方を新しい方向に転換し始めたのではないかと思います。また、自分が関わっている地域で、くるるセミナーを紹介し、新しい方がくるるセミナーに参加し、そこでまた活動し地域へ返ってくる形の循環が1年半でできてきたのではないかと考えています。今では、口コミで受講生が満員になってしまうほど盛況です。
 今後、このようなシニア世代の人々の動きを強めて、人の循環を作り出せないだろうかということが、私どもの課題であります。これが「ひと循環型社会支援機構」の一つの考え方です。

労働力率試算モデル・生産年齢人口の推移
(藤正厳・古川俊之『ウェルカム・人口減少社会』、
文春新書、2000年、21頁より転載)
 例えば、右図は、これから高齢社会になり従属人口が増えていくことを示したグラフです。
 1920年は、若年労働者が非常に多くて、安く使え、そして活力のあった社会でした。 
 1980年は、団塊の世代の方々、30〜40代が社会の第一線で働くようになった時代です。そしてまだ充分に働く人々がいました。 
 2025年は、若年者が減少して、大変だと言われていますが、実は70歳ぐらいまで働けると考えれば、労働力としてはそんなに減少しないのではないかというのがこのグラフです。
 ■の部分は、労働者の比率です。とくに女性に働いていない人が多いことがわかります。今後、高齢者と女性が社会に出て行けば、十分な労働力はあります。そのためにも、ジェンダーフリー、エイジフリーな就労環境を整備することが求められます。
 ここで従来の社会的な雇用慣行をどう変えるかということと、シニアが継続的に仕事をする時に、どのような手当が必要なのかが課題になります。
 従来のように若年層中心で力任せに仕事ができた時代ではなくなりました。シニア世代に関しては、身体的動作能力は40歳ぐらいから下がり始めますが、知的な能力は、向上し続け、70歳ぐらいまでは、ピークを保っていけることが長寿学でわかっています。その時に必要な身体動作を補うような設備、機械があれば、シニアの方々がもっている知的な能力を引き出せるような環境を整備することによって、20〜30代の人々と一緒に働けることがわかってきています。その意味では、彼ら自身のいろいろな能力を使って、また新しい社会のために貢献をしていけるようなものを引き出せることができるのではないかと思います。そして、それが、シニアの方々の尊厳や生きがいにつながり、彼らが自分の存在を社会的にも世代的にもつなげていく、結びつけていくことへと展開していくのではないかと考えています。

もどる  目次へ  すすむ