私どもは、プロジェクトを立ち上げるために、名古屋市や岐阜で、2万人規模のアンケート調査と100名規模のインタビュー調査を行いました。また、(財)中部産業・労働政策研究会が豊田市・刈谷市で興味深いアンケートやインタビュー調査をしています。ここでは先ず、中部産業・労働政策研究会のアンケート調査の結果を見ながら、高齢社会の現実を概観しておきましょう。
![]() 配偶者の有無による幸福感の年齢層別比較(女性) (中部産業・労働政策研究会の調査(2001年)による)
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男性 − 配偶者ありの場合は、若年層から高齢者まで一貫して幸福感が高い。
女性 − 幸福感の振幅が大きく、またある年齢層で配偶者のある女性の幸福感が配偶者のない女性のそれよりも低くなる。
これは、ご主人が退職して家庭に入られると、奥さんは戸惑い、配偶者のない人よりも幸せ感が低下してしまうということなのです。しかも、あるところから幸福感は頂点に達するいきおいになります。それは、ご主人が亡くなった後らしいのです。
ご主人がお宅へ還ってくることが女性にとっては、負担である。1人のほうが楽しいということらしいです。
質問2 困った時に相談をする人は誰ですか?
男性 − 1位 配偶者(妻)
女性 − 1位 兄弟姉妹・親
質問3 あなたをイライラさせる人は誰ですか?
![]() 配偶者の有無による幸福感の年齢層別比較(男性) |
男性 − 1位 上司
女性 − 1位 夫
このような家族関係です。
調査対象となった男性の皆さんは企業に勤務されていますが、今までのような企業中心の生き方をしてきた方が、引退した後、どのように社会に還ってくるのかが、社会的大きな課題となるのではないかと思います。
上記のような男女の意識の違いは、私たちの調査でも明らかになっています。例えば、奥様方は、夫が還ってくると邪魔で仕方がない。「あなた、来年、定年だけど、家にタダでいるつもり?」とご主人に言ってしまい、ヘソを曲げられた方がいました。三連休で休んでいたら、奥さんが「どこかに行くとこないの?」ってきくので、「よし、じゃあ一緒に出かけようか」とこたえたら、違う。これは、どこかに連れて行けという事ではなく、邪魔だからどこかへ行ってくれという事だった、だから三連休が怖いと、ある大企業の管理職の方が言われました。また、すでに引退された方々も「家にかえってから何もすることが無い。テレビのお守りをしている状態。することが無いので掃除ばかりしている」。これが一つの現実です。
<濡れ落ち葉> | <産業廃棄物> | <オレも族> | <使用済み核燃料> |
世の奥様方は、定年後の夫のことを、上の表のように表現したりします。
<濡れ落ち葉>
とは、奥さんにぺったりくっついて、どこにでも付いてくる、または、ゴロッと畳にへばりついていて、ほうきでもはきとれなくて、邪魔だという意味です。<産業廃棄物>
は、もう使い道がない、<オレも族>
は、奥さんがどこかへ行くというと「オレも」
といって付いてくる、邪魔で仕方がないという意味で言われます。<使用済み核燃料>
は、これはひどいと思うのですが、使い道もないし捨てる場所もないということで、一つの現実だろうとも思います。
このように、これまで社会の第一線で働いてきて、今日の日本の社会をつくりだした人々が、これからは大量に家庭や地域社会に還ってきます。この方々をこれからどう受けとめ、彼らの尊厳を保ちながら、新しい生活へと歩みを進めることのできる社会をどうつくっていくのかということです。