第一章 日常の中にある教育
昔から、「子は親の背を見て育つ」と言いますが、子どもは親からさまざまな影響を受けながら大きくなります。小さい子どもがお父さんやお母さんの口調をまねたり、お父さんの横に座ってビールをおいしそうに飲むしぐさをまねしてみたりする姿に、思わず苦笑することもしばしばです。いろいろな意味において、最初に子どもが影響を受けるのは、やはりほとんどがお父さんやお母さんと言えるでしょう。幼い子どもたちは、自分をかわいがってくれるお父さんやお母さんのことを、全く疑うことなく信頼しているからです。
しかし、子どもも成長するにつれ、親が自分の思いどおりにしようと強制しても、うまくいかず、衝突することもたくさん起こってきます。親の言うことに従わせようとして、力ずくのしつけをする人がいます。このやり方は、親にとってだけ都合のよい方法であり、子どもは、親を信頼しなくなるばかりか、家庭で押さえつけられた気持ちのはけ口を、別のところに求めたくなります。そうした状況を避けるためにも、親と子どもがきちんと向き合うことが大切です。そして、それぞれに何が起こっても、最終的には互いを信頼し、認め合って暮らしたいものです。
子どもたちは、毎日の生活を通して、自然に、親の姿から多くのことを学びます。悩みに直面したとき、生き方や進路を決めるときなど、人生のさまざまな場面で親の影響を受けたという人もいます。何気ない日常生活の中で、知らず知らずのうちに、お父さんとして、お母さんとして子どもに影響を与え、教育しているものなのでしょう。一方で、子どももまわりの人たちに影響を与えています。後で考えてみた時、子どもが親に影響を与え、親の考え方を変えてくれたこと、親として人間として成長させてくれたと思えることは、決して少なくありません。
お父さんも、心して子育てに臨みたいものです。