国際化と人権 
もどる  目次へ  すすむ  
スウェーデンの社会生活


 スウェーデンは、だいたい人口が884万人なんです。国土は日本の1.2倍です。労働については、16歳から64歳までのだいたい7割から8割までが、完全に働いているということです。1960年代くらいまでは、「女性は家庭に」というのが常識だったのですけれども、60年代の経済成長によって、労働不足になりました。そのとき女性が社会進出をして、それ以来、高い割合で働くようになったのです。ですから、保障に関しても、実際に、保育所の整備が進んでいて、ほとんどが入れる状況になっています。それは、子供が減ってきて、家で一人でテレビゲームなどをやっているよりは、保育所に入れて、その中で協調性を養う方がいいのではないかと考えられているためです。一人遊びが増えるのは良くないから、就学前には必ず保育所に、ということです。そのための育児制度ですけれども、育児休暇というのが全部で450日間あります。原則的には夫婦のどちらが休んでもいいと言われています。そのうちの360日に関しては給料の80%が支給されるということです。それ以降に関しては1日千円くらい支給されます。育児手当に関しては、昨年の事例ですけれども、子供が一人の場合は大体月額1万2千円、二人でその倍支給されます。あと、子供が病気になったときに、仕事を休める休暇は、子供一人について120日間は認められているということです。
 住宅に関してですけれども、住宅というのは、始めは子供がいるから広い方がいいと考えられています。そして子供が成人したら、その家を子供に預けて、自分たちはもっと小さな家に移るという仕組みで、住宅市場がすごく流動性があるとともに活性化しているということです。住宅というものは生活必需品みたいに考えられています。
 それと、有給の休暇なのですが、休暇は年間5週間と言われています。主に夏に4週間とって、クリスマスに1週間とるという制度ができています。休暇期間中の賃金は、普通の賃金の15%増しで支給されるということです。いずれにしても、労働時間は一般的には40時間で、看護職などは38時間、介護職は35時間です。一般の労働時間が40時間というのは、他のヨーロッパの国と比べても普通であるということです。
 ただ、最近のスウェーデンからのニュースに、介護の施設では、3日出勤して3日休むという働き方が進んできているという話が、記事に書いてありました。そうすると、すごく労働意欲も高くなって、3日後には3日間休みが取れるから、すごくいいと言われています。 スウェーデンでは例えば、老人という言葉はあまり使われなくて、年金で暮らす生活者という位置付けになっています。
 スウェーデンでは消費税は25%と言うことです。一般的には、25%というのはすごく高いと思いますけれど、それは結局、高い福祉を実現するためには高い負担を、ということなんですね。では日本がどうなのか、高負担なのか低負担なのか、高福祉なのか低福祉なのか、その辺は議論があると思います。ただし日本の場合は、急速な高齢化という問題があります。総人口に占める65歳以上人口の割合が7%になったら、「高齢化社会」と言います。それが14%になったときに、「高齢社会」と言うのですね。それで、その7%から14%に行くのに何年かかるかというのが、高齢化の速度を測るものさしなのです。日本は、7%から14%になるのに、わずか24年間でした。ちなみにヨーロッパを見ると、幅はありますけれども、だいたい80年とか100年かかっています。つまり日本は、他の諸外国に比べて、3倍から4倍の速さでお年寄りが増えているということなのです。ですから、日本の福祉が遅れていると言われるのも、事実かもしれませんけれども、あまりの急激な高齢化に追いつかないという面もあります。ある意味で、24年間でここまで整備してきたのだから、たいしたものだという見方もできるわけです。これは議論が分かれるところだと思います。
 スウェーデンではちょっと先に進んでいて、老人ホームというのは解体の段階になっています。ではどうするかというと、在宅でみるということです。日本の場合、寝ているお年寄りに対して、ヘルパーが来るとしたら1週間に1回か2回ですね。それがスウェーデンでしたら、1日に3回とか4回来ます。そうしたら自宅でも暮らせるということになります。ですから、ヘルパーの訪問回数が違うし、ヘルパーの数もだいたい70倍違うと言われています。

もどる  目次へ  すすむ