国際化と人権 
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高齢者福祉医療の三原則


 ここで、北欧のデンマークで出された「高齢者福祉医療の三原則」というのを紹介します。
 第1の原則は、「人生の継続性」という原則です。これはどういうことかというと、老後は限りなく生まれ育った土地で暮らせるということです。仮に施設に入ることになっても、自分の家具とか食器を全部持ち込んで、自分の家を再現できるのです。何十年も住み慣れたところから環境が変化するというのは、人間にとってはすごく大きなストレスになるわけで、そうしないために、家具などを持ち込むということです。
 第2の原則は、「自己決定の尊重」です。老後の暮らし方を自分で決めるということが徹底しているんですね。例えば日本のように、家族に介護する人がいないからやむを得ず施設に入れるというのではなくて、その人が家で暮らしたいと言ったら、その決定にあわせて社会が動くということです。日本の場合は、お年寄りが社会に合わせるわけですね。でも、例えば一人暮らしで寝たきりになったとしても、その人が家で暮らしたいと言ったら、社会がそれに合わせて、ヘルパーを1日3回や4回派遣するということ、それが「自己決定の尊重」ということです。
 3つ目の原則は、「残存能力の活用」です。これは、まだ残っている機能をフルに使ってリハビリするということです。日常生活において、自分でできることは何でも自分でやってもらいます。本人ができることも全部手助けしてしまうのは、残存能力を低下させるから、やってはいけないという考え方が徹底しています。
 スウェーデンの制度も、そうした考え方をもとにしてつくられています。もともとスウェーデンという国の考え方がすごく、一人ひとりを尊重していて、それが細部にまで行き渡っているんですね。寝たきりにさせない、なるべく離床させて、むしろ身体機能を回復させていくという、リハビリにすごく気を使っています。そして、最終的には在宅で、ということを方針の中心にしています。

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