国際化と人権 
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援助活動の注意点


 特にその中でも一番気をつけるのは、お金の流れなんです。年間にすると今まで数百万円から1千万円くらいのお金が動いています。実際にそれがどう使われているのかというと、日本の会員の人が、ある子を例えば3年間とか、期限付きで援助していくわけですね。1ヶ月だいたい2000円とか、そのくらいのお金を会員の方から振り込んでもらうわけです。そのプロジェクトの内容に現地で協力してもらうためには、必ず他の団体と手を結ばなくてはなりません。文化のまったく異なるわれわれ日本人が、そこに行って勝手にものを支給するのは、現地の人たちにとってはすごく抵抗があるわけです。やはりプライドがあって、援助を受けるのが嫌だというんです。でもすごく困っているのです。
 そこで、現地の国際赤十字と、私が代表をしている小さな団体とが、手を結ぶわけです。2つの団体がどういう関係になるのかというと、例えば100万円なら100万円をどのように使うかというときに、もし赤十字の下部組織に入っていたら、100万円はただの募金になってしまう。だから、こちらがやりたいプロジェクトに関しては、ある程度それを実現してもらいたいという意思を伝えます。その内容は、障害児に対するちょっとしたサポートということですね。そこで、ある意味で国際赤十字と小さな対等関係になるわけです。100万円が全部、赤十字が思うように使えるということではなくて、なるべくこっちのプロジェクトを反映してもらいたいというようにもっていきました。仮に100万円ならその100万円の使い道が、例えば赤十字の職員の交通費になったり、あるいは本当に説明がつかないようなものだったら、日本の人に対する報告ができないわけですよね。もともと障害児に対して援助しますということで広報しているのに、ふたを開けてみたら、障害児ではなくて別の方にお金がいっていたのではだめだということです。ですから、杖なら杖、医療費なら医療費にどのくらいかかったか、そして誰々君の医療費には、日本の会員の誰々さんと誰々さんとが関わっているということです。そのように「顔が見える」という形に気をつけて、資金の流れをしっかりするということです。

 その他に注意しなければならないのは、もともと部族対立があって内戦になったわけですから、同じ何万人というキャンプの中でも、対立しあう部族はやはり一緒に暮らせないということがあるのです。だから当然そこで、宗教とか、その人たちの文化とか、部族の価値観を最優先しなければならない。
 ソマリアは、イスラム圏ですから、こういうことがあります。何人かのスタッフを募集したときに、ほとんど代表に男の人が出てきたんですね。だから、そのなかに女性のスタッフも入れたいということをこっちが言ってみる。そうすると、「代表として、そこに女性が出てくるのはおかしい」と言われるのです。それが自分たちの文化だと言い切られてしまう。しかし、それもある程度配慮していかないと、キャンプの中がまとまらなくなる可能性があるんですね。そういう文化の違いがあるので、直接日本人が現地へ行って、日本人の組織でやるというのではなくて、必ず国際機関を通して、その国際機関が現地のスタッフに集合をかけてやるというわけです。なおかつその現地のスタッフは、現地のやり方でやって、文化や宗教を完全に無視したようなことはしないというかたちで行います。なるべく現地の価値観を中心にして、私たちは金銭的な援助はするけれども、最終的な決定は現地に任せていく。そういうことに一番注意を払ったということです。

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