国際化と人権 
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第1部 先進国と開発途上国の課題

世界の様々な子供の問題

 日本国憲法の第25条で、生存権をうたっています。「生存する権利」というのは、我が国ではあたりまえで、憲法の基本的な原理になっています。けれども、例えば開発途上国を視野に入れた場合、その生存権というのは、我が国だけの生存権を意味するのでしょうか。
 今日取り上げるのは、そういう南北問題、地球の赤道を境にして、北の方には豊かな国があり、南の方には貧しい国があるという問題です。その問題の中心は、経済的格差ですね。GNPは100倍以上開いているという実態があります。その中で、特に今日は、子供の問題を中心に考えたいと思います。
 ちょっと簡単な統計を紹介しますけれども、5歳未満で亡くなる子供の数は世界でどのくらいかというと、約1100万人です。どうして亡くなっているかというと、風邪とか下痢とか、きわめてささいな病気だということです。ということは、それだけ基本的な医療が遅れているということですね。ユニセフなどでは、「静かな緊急事態」と言っています。それがまずひとつ大きな問題です。
 2番目に、子供の兵士の問題です。チャイルドソルジャーといわれる、子供が戦場に駆り出されているという問題ですね。18歳未満の子供が戦場に駆り出されている人数というのが、およそ30万人と言われています。特にその中でも、子供が兵士として行く場合は、戦場に駆り立てられる場合もあれば、男の兵士の性的な虐待にあっているということもユニセフに指摘されています。なぜ子供が戦場に駆り出されやすいかというと、理由があります。それは、ひとつには、以前に比べて武器が軽くなって、子供でも使えるようになったということがあります。それと子供は、自分の家族が殺されたとか、乱暴を受けたときに、その憎しみに対する報復の気持ちがすごく強い。それで兵士を希望するのだということです。そういう戦場に出向いた子供の兵士の問題というのは、もちろん死亡するというのも大問題ですけれども、たとえ帰ってきても、心に傷を負って、なかなか日常生活に復帰できないと言われています。
 3番目は、エイズ問題ですね。現在エイズにかかっている人の数は、3400万人以上います。1日1万6000人ずつ増えていると言われています。その半分が15歳から24歳までということです。15歳未満は、もう400万人死亡している。そして、エイズ孤児、両親がエイズになって死んでしまったその子供が、周りの医療の遅れ、あるいは差別の問題から放置されやすいんです。その子もエイズになっていると、本当に誰からも見向きされないということになります。
 最後の問題は、児童労働の問題です。子供というのは大体18歳未満と考えた場合に、世界で2億5000万人という子供が、児童にもかかわらず労働に加わっている。その主な原因のひとつが、貧困です。また、児童労働の中でも、性産業に巻き込まれている子供の数が100万人と言われています。あと、長時間労働です。インドの事例ですけれども、インドでは、子供の人身売買が今でもあると言われていて、ある製造業では1日20時間働いている子供がいるということも報告されています。
 そういう子供についての多くの問題の中で、もうひとつ、今日の課題ですけれども、いわゆる難民の問題があります。 難民というのは最近、かなり世界中に注目されてきている問題です。ある国に内戦が起こったために、国外に出ていっている難民が2100万人と言われています。それともうひとつ、国内難民といわれる難民がいます。国内で戦争が起こって、自分の家を追われて、国の中で難民生活をしている。そういう難民が2000万人といわれています。だから、国外に出ている難民と、国内の難民を合わせるとかなりの人数になります。今日は、実際に私がNGOで関ってきたということも含めて、アフリカのソマリアという国とその難民援助の問題を通して、日本の国際協力を考えたいと思います。

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