知的障害について
「知的障害」という用語が「精神薄弱」に代わる用語として一般的に使われるようになったのは、つい最近のことです。法律上は、平成11年から精神薄弱という言葉を使わなくなりました。「精神」の機能には、記憶したり判断したりするという知的側面だけではなく、人に対する優しさや感性などの情緒的側面、積極的に取り組むなどの意欲的側面が含まれます。「精神薄弱」という言葉を使うと、知的側面だけでなく、情緒的側面や意欲的側面まで遅れていると受け取られてしまいます。そこで、知的機能の障害であって、「精神が薄弱なのではない」ということから、「知的障害」という用語が使われるようになってきたのです。
知的障害を持った方のうち、在宅の生活をされている方が約20万人、入所中の方が約11万人います。それから、知的障害者には、「療育手帳」という手帳があります。名古屋市では、「愛護手帳」と言っています。ちなみに東京都は「愛の手帳」、埼玉県は「みどりの手帳」というように、各都道府県で呼び方はバラバラです。
いわゆる知能指数、知能テストの結果から得られた年齢が精神年齢で、それを実際の年齢で割った値を100倍したものを知能指数といいますが、この知能指数の結果をメインに、医師が、知的障害があるかどうかを決定します。18歳くらいまでにいわゆる知的機能の障害がないと、療育手帳の対象になりません。したがって、20歳以上で、何らかの形で、知的機能が落ちた状態になったとしても、療育手帳の対象外になっています。いわゆる「呆け」ですね。「呆け」の老人は、療育手帳をもらえません。
知的障害の原因はさまざまで、実質わからないと言われています。染色体異常とか、妊娠中の中毒とか、出産時の障害とか、生まれた後の脳障害とか、いろいろあります。脳に障害がなくても、知的障害になる場合もあるという報告もあるそうで、遺伝だけではないということもわかってきています。知的障害は、知能指数がだいたい70以下と機械的に分類してしまうということは、あまり知られていません。
ちなみに、知能検査は15歳くらいを基準に考えるので、そうすると、軽度の方は、精神年齢としては小学校高学年くらい、中度の方は小学校低学年くらいの精神年齢に相当することになります。年齢が高くなると、いろいろ経験するとできることが多くなるので、これはあくまでも目安で、これだけで考えてほしくはないですが、一応一つの目安にはなるのではないかと思います。