死にゆく患者の心に聴くー日本人の自然観、生命観ー 
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はじめに

柏木先生
 サマセット・モームという有名な作家が、次のような言葉を残しています。「世の中にはたくさんの統計があって、その中には、まやかしの統計もある。しかしこの世の中に絶対に間違いがない統計がひとつ存在する。その統計とは、人間の死亡率が100%であるという統計だ」というものです。これ、当たり前のことをいってるんです。作家というのは非常に、当たり前のことをうまくコンパクトに表現しますね。人間の死亡率は100%である。これは絶対に間違いのない統計です。
 この世に生を受けたものは、ただ一人の例外もなく、死を迎えます。まさに人間の死亡率は100%です。しかし私たちは日常生活の中で、あまり自分の死ということを考えないで生活をしているのではないかと思います。頭の中ではやがて自分も死を迎えるということは誰もが理解をしているんですが、自分の死についてしっかりと考えるということを、あまりしないのではないでしょうか。
 私は過去20年間ホスピスという場で仕事をしてまいりまして、約2500名くらいのがんの末期の患者さんを診てきました。その看取りの中から、様々なことを患者さんやご家族から教えていただきました。今日の私の講演の内容のほとんどは、私自身が患者さんやご家族から教えていただいたことを、皆様方にお伝えする、そのような形になろうかと思っております。

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