ノンネイティブスピーカーの英語 …英語学… 
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日本人の英語

 英語で自信を持っている能力は何かという質問を学生にすると、一番多い答えはリーディング、読むことです。日本人は読めるが話せないとよく言われ、話せないことがクローズアップされていますが、私は大学生が本当に読めるのだろうかと感じています。「これは何について書いてあるのか」と読んだ後に聞きますと、翻訳をし始めたりして、読んだことのポイントがつかめていない学生がいます。つまり、読めると思っていても実際は日本語に置き換えができるだけで、速読してポイントをつかみ、要らないものは読み飛ばし、自分に必要な情報を取捨選択するような実用的なレベルまで、一般的に英語を読む力は達していません。話せないといっても、話すことの方が結構できるのではないかと思われるような学生もいます。
 アメリカなど英語圏の大学や大学院に留学したいという場合に、TOEFLのスコアは何点かと聞かれます。これは、何点だったら入学が許可されるとか、この点数ではまず英語のクラスに入るべきとか、そういう英語力の判定をするために使われるテストです。この得点からわかるのは、日本は受験者数が多いのですが、世界ランキングでは点数が非常に下の方であるということです。アジアでは日本より下が北朝鮮だけでしたか、下から数えた方が早いのです。
 TOEFLにはリーディングとか文法、リスニングのセクションがありますが、最近では日本人が従来できると思われていた文法でもあまり好ましい結果は出ていません。TOEFLは北米へ留学を希望する人が受けるもので、各国によって受験者数が違うことには注意すべきです。日本には10何万人という多くの受験者がいますが、例えばブルネイでは34名など2桁です。国によって受験者数にバラツキがあるので、平均点を国別に単純に比べても危険であると承知しておくべきですが、1964年から日本の平均点はずっと低いのです。
 上位を占めているのはオランダ、スウェーデンなど北欧の国やドイツです。これらの国々の母語であるオランダ語やドイツ語は英語の親戚で、言語的に非常に似ています。また、香港とかフィリピンなども高く、英米による植民地を経験した国の平均点は高い傾向があるように、国際的なテストのスコアを比較すると歴史的な背景が浮かび上がってきます。
 しかし、韓国や中国は日本同様に英語を公用語にしていないEFLの国ですが、これらの国と比較をしても低いのです。少し前までは韓国よりも日本の平均点の方が上でしたが、今は下になってしまっているのが実情です。つまり、日本人の英語力は国際比較をすると高くはないのです。話す、聞くことだけではなく、読めると思っているが本当に読めるのか、本当に書けるのか、それをぜひ考えるべきです。

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