児童虐待と子どもの権利擁護 
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子どもの権利擁護への取り組み

@岐阜県多治見市の「子どもの権利検討委員会」の取り組みから
A各地での権利擁護や権利条例の取り組みから

 岐阜県多治見市は今年の1月から子どもの権利条例作りの取り組みをしている。私もその一メンバーで、現在テーマにそって各機関団体等にヒアリング等行っている。現在、各地の自治体では権利条例が作られてきている。今どういう状況なのかについて少し紹介をしておきたい。
 大阪のベッドタウン川西市は、いじめの問題からスタートして救済のための条例になっている。子どもたちのアンケートで、生きていくのは辛いというのが年々増えてきている。子どものためのオンブズ制度が市民と関係者のネットワークの中で進められ、条例が作られていった。
 川崎市の子ども条例は基本的に子ども参加、市民参加である。子ども会議の実績があり、直接参加からスタートした。22人の委員の中で、9人は子ども委員として参加している。子ども達に対する広報をきちんとする。又、子ども委員を更に募集し、子どもや市民が参加しやすい土日等に会議を開いて、子どもの意見をきちんと聞く。そうして条例を作った。
 箕面市は権利宣言。子どもの権利、管理が混在したものとなっているが、子どもの権利を念頭に置いたもので子どもの参加に取り組み始めている。
 同じように多治見市も、市民の代表と児童福祉や法律の研究者が3人入り、子ども権利検討委員会という中で、現状に即したものにしていこうと、すでに10回位検討してきた。現在はヒアリングをしている。いじめや不登校あるいは虐待の問題で、その分野の人達を呼んで、ヒアリングを受けて市民集会を開いている。ミニ集会をいくつか開いて意見を集約して、来年の今ごろには第一次中間まとめを出すことになっている。
 多治見市は4、5年前から、市長を中心に子ども達100人くらい集まり、子ども議会を設けていた。今年は少し趣向を変えて、多治見市出身の歌手を呼んで、歌を歌わずに、その人と生き方の問題とかをトークする。そのあとに、市長と市民の代表と残った子ども達40名位で議論をた。中学校の男の子が「僕たちは子どもだと言われているけれども、電車やバスでは大人料金だ。なぜ大人料金を払うのか。」と市長にじかに質問したり、いろんな意見が出された。
 子どもを集めて話をしているといろんな意見が出てくる。日本が1994年に権利条約が採択され、多治見市では2年位あとに子どもの権利条約の多治見市版を作って、家庭に全戸配布している。それくらい子どもの権利に取り組んでいる市である。「文化と人権の課」という担当課が中心となってそういう問題を取り上げている。川崎市、川西市、箕面市の良いところを取り入れて、多治見市にあった子どもの権利条例を2年後につくっていこうと動いている。各自治体にそういう動きが起こってくるのは、当然だろうと思っている。
 子どもの権利に関するアンケート調査をもとに、多治見市で大人と子どもにヒアリングをしている。自己認識では、自分が好きと回答した子どもが26.6%で、子どもが子ども自身のことを好きと思っていると回答した大人が46.2%。どちらかといえば好きと回答した子どもは48.9%、大人は42.8%。
 休息する居場所では、もっと休みや休息する時間がほしい子どもについては、子どもが66.9%、大人は36.4%。どちらかといえばほしいと思う子どもは23.1%これが大人は3.4%。差が大きい。
 自分にとって安心できる場所がある子どもは94.0%、大人は99%だから、これは多い。家庭が最も安心できる場所と答えた子どもは55.3%、大人は77.8%。ここでも開きがある。
 それから意見表明と参加の機会についてということで、家庭生活の中でもっと意見を聞いてほしいと思う子どもは38.0%、大人は95.8%。学校生活の中でもっと意見を聞いてほしいと思う子どもは59.7%、大人は88.5%、ということである。
 それから虐待・体罰については、大人のことばや行為で大変いやな思い、つらい思いをしたことがある子どもは36.0%。家庭で殴られたり、けられたりしたのは20.0%、学校で殴られたり、けられたりしたのは11.1%。こういう状況が出ている。
 このアンケートをもとにして市民集会を開いたり、多治見市の権利条例を作っていくための議論を行っている。近江八幡や箕面市、川西市、川崎市。各地で、今積極的に権利条例作りがはじまっています。


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