児童虐待と子どもの権利擁護 
もどる  目次へ  すすむ  
児童虐待の防止等に関する法律案プラスとマイナス

@児童相談所からの検討
 児童相談所の仕事はたくさんあるが、通告がきた場合、今の仕事を中断して現場に飛んでいかなければ行けないという新たな仕事が増えた。更に、見に行ったらその処置をどうするのか、その場ですぐに決断をしなければならない。児童相談所の仕事には非行問題、障害児問題、擁護問題、健全育成問題等々多くの相談をかかえている。しかし、専門のスタッフを増やしたかというとたいして増やしていない。一つの児童相談所に一人位しか増やしていない数である。あとは自治体がどれだけ負担するかという問題である。
 親のカウンセリングもすることになったために、児童福祉士は面接の仕事も増えることになる。児童相談所の職員の仕事量は倍増しているが、児童虐待防止法では人員の増加はうたっていない。

A児童福祉施設からの検討
 一時保護した子どもたちは、家庭に帰すことができない場合は児童福祉施設に入所することになる。児童福祉施設への虐待での入所が増えてきており、施設の約5割位は児童虐待による入所児童がいる施設が多い。
 そんなに虐待の子どもを入所させて、指導できるのかという問題がある。施設に対しても職員増はしていない。少し改善されたのは、10人以上虐待の子どもが入った場合は、非常勤の新規職員を採用することができることになった程度である。非常勤とは、週2、3回何時間か来て子どもの面接をする程度である。そんな単純なことでは対応できないことはわかりきっているはずである。
 施設は毎日24時間子どもと生活する職員が大変なわけで、たった2、3時間子どもに対する職員よりも、24時間子どもと接する人が欲しいわけである。その職員と子どもたちとの関わりの中で、子どもは変わっていく。こういうことが非常に大事で、施設というのは治療機関ではない。治療の必要もあるけれども、集団でいかに生活していけるかということが大事になる。子ども一人一人個別に関わることも大切であるが現状は日常的に子どもとかかわる職員が必要であり、そのために職員を増員することが必要なわけである。そこのところが改善されていない。
 親が児童の面会引き取りに来たときに、施設がどこまで対応できるのか。今は職員が親の指導もすることになっているが、子どもの生活で手一杯で果たして親の対応までできるのかも配慮することも大切である。

B市民レベルからの検討
 今回の虐待防止法で通告義務というのがある。イギリスやアメリカの通告義務は罰則規定があるが、日本は罰則規定が無い。だから通告しなくっても言いわけですが、市民に課せられた道徳的な義務ということになる。
 今までは通告した人が誰なのか加害者に言わなければいけなかったが、今回の改正で守秘義務より通告義務が優先されるように変わった。通告者を守ることが優先される。しかし、市民の中ではきちんと位置づいていない。言うことをためらってしまう。この問題が非常に大きいのではないかと思う。
 きちんと制定されて児童虐待防止法でこういう風に変わりました、と周知徹底されているかというと、そうではないと思う。もっとPRすべきだと考える。
 児童虐待防止法は短期間のうちに作られたものだから、細かいことは付帯事項として3年後に内容を見直すと言っている。3年経ち、不備があったら見直すことになっている。法律は必要だが、議員の方達が実態を把握して法律に必要な設備・職員をふまえて考えたか、というとそこまでふみこんでいないと思う。法律ができた以上はいかにうまく運用していくか。国民、市民の考え方で変っていくので、有効に生かしていく必要がある。マイナス面を解決していくという方向に繋げていけばいいかなと思う。


もどる  目次へ  すすむ