現代哲学からのアプローチ・・・「グローバル化する現代と伝統文化」 
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ポスト産業社会における「複雑性」と「不安」


宮原勇先生
 ある一定の均衡点に達するような社会であれば、例えば現在の不況でも、我慢すれば不況が安定したところにたどりつくと思われますが、どうもそのようなことでもありません。この「自己反省的モニタリング」という構造は、道徳や法律上の帰責可能性、つまり自分の責任を負わなければならない構造となるばかりではなく、自分の存在の偶然性と無意味さを自覚させることで「不安」をもたらします。現代の日本で言えば、バブル以降の現代人は「不安」を抱いていることになります。
 そもそも近代の社会現象が持つ不確定性は、それに参加する側の知の不完全性という前提の下に、不正確な予測と、常に一定のバイアスをもつ人々の予測のその意図せぬ結果との間のフィード・バックから発生するものです。そういう状況の中で、今度は我々の問いとして、自分の存在の意味をいかに見出したらよいのかということを考えて見たいと思います。
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