![]() 浅田次郎氏 |
新選組とその時代 |
はじめに
話の枕に全然違う話をしますと、「月代(さかやき)を剃る」とは一体どういう習慣なのかということを考えたことありますか。ある時、私は自分の頭を見ながら月代とは何だったのだろうと考えました。これは世界中を調べると、遊牧民族の間ではあります。古い蒙古族です。そして満州族の間では月代を剃る風習があります。剃って後ろだけを束ねるというものですが、あれが実は清国の風習です。清王朝というのは征服王朝なので、漢民族ではありません。彼らは満州民族です。清王朝は明代の政治や習慣をほとんど踏襲しましたが、その中で一つだけ譲らないものがありました。それが「弁髪を結え」というものです。漢民族はこれから先、満州族と同じ弁髪を結えと強制しました。なぜそれにこだわったのかと思いますが、それが満州族のシンボルだったのでしょう。つまり北方騎馬民族というのは髪を剃る風習があって、恐らく古代日本は、その大陸の北方騎馬民族と血族的な関係があって、恐らくその習慣として髪を剃る月代が江戸時代まで残っていたのではないかと私は考えています。
浅田次郎氏