ことばの万国博覧会−アジア館− 
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アラビア語


布施温先生
布施温先生
 私はスペイン語が専門です。なぜスペイン語が専門なのにアラビア語をやっているかと言いますと、歴史的経緯からスペイン語にはたくさんのアラビア語が入っているからです。アラビア語は中東11ヶ国、アフリカでは9ヶ国で話されていて、アラビア語を話す人口は約2億人です。アラビア語はイスラム教徒の聖典であるコーランの言葉なので、今後アラビア語というのは大切になってくると思います。
 アラビア語の文字は固有文字で、位置によって少しずつ形が違っています。また、アラビア語の特徴は文字がすべて子音だということです。母音は「ア」「イ」「ウ」の3つしかありません。これは「エ」と「オ」が発音できないわけではありません。そしてもう1つの特徴は正則アラビア語と地域ごとのアラビア語があるということです。テレビ局や新聞などではすべて正則アラビア語で表記や発音されています。地域ごとのアラビア語で話すとなかなか通じないこともありますが、正則アラビア語で発音するとアラビア語圏すべてに通じます。それからアラビア語は喉の音が非常に多いので、発音はなかなか難しいです。
 アラビア語では基本的な概要を3つの子音で表します。例えばK、T、Bで「書く」という意味を表します。それに接頭辞、接尾辞などを加えて類似の単語を生産します。例えば「KaTaBa」で「彼は書いた」、それから「yaKTubu」で「彼は書く」、「KiTāB(un)」、( )の中は実際には発音しませんが、これが「本」です。これの複数形が「KiTāBat(un)」です。それから接頭辞の「ma」が付くと場所を表すので、「maKTaBat(un)」は「図書館」です。それから「事務員」が「KāTiB(un)」となります。すべてK、T、Bという3つの子音で表されています。したがってアラビア語の辞書を引くためには、どのような子音で構成されているかを見分ける必要があります。
 また、複数形についてですが、2については2を表す双数形があるので、複数形は3以上です。しかも複数形のほとんどが不規則です。他にも文には名詞文と動詞文というのがあります。例えば「Anā Tālib(un)」(私は学生です)はbe動詞にあたるものはありません。しかし過去形になるとbe動詞にあたる「Kāna」が出てきます。これには男性形と女性形があって、少しロシア語に似ています。そして動詞文では動詞が先頭に来ます。
新聞・テレビによく出てくるアラビア語
 左に新聞やテレビによく出てくるアラビア語を挙げました。一番上は新聞では「アルカイダ」と書かれているものです。これは「基地」という意味になります。次が「アル・ジャージーラ」で、これは「島」という意味ですが、日本ではカタールのテレビ局として有名だと思います。この2つの単語の一番左側の丸いところの点々は発音しません。女性名詞であるという印です。他にもよく出てくるのは「ジハード」ですね。これは「聖戦」という意味です。そして「ジハード」に参加する人のことを「ムジャーヒドゥーン」と言います。これは複数形で書きます。他にもイラクの国旗に書いてある「アラー(フ)・アクバル」というのがあります。これは「神は偉大なり」という意味です。この「アラー(フ)」というのが「神様」です。「アクバル」というのはまず「クブル」といって、「大きい」という概念があり、その最上級になります。それから特徴的なアラビア語として「アル・ハンドゥ・リラー」というのがあって、アラビア人はよく使います。それから「イン・シャー・ラー」は「神がお望みになれば」という意味です。これに中近東にいる人は悩まされるそうです。明日9時に会いましょうと言ったのに、9時になっても来ないのでどうしてと聞くと、神様がお望みにならなかったと言われるそうです。アラブ地域には「IBM」というのがあって、「I」はこの「イン・シャー・ラー」です。「B」は地元の言葉で言えば「ボクラ」ということらしいのですが、「また明日」という意味です。それから「M」ですが、これは「仕方がない」という意味です。アラブ地域で生活するにはこの「IBM」に慣れないといけません。それから「エジプト」は「ミスル」と発音します。そしてエジプトにある「ピラミッド」は「アフラーム」と言います。これは3つ以上あるので複数形になります。
 最後に挨拶の言葉ですが、「こんにちは」は「アッサラーム アライクム」と言います。この「アライクム」の「ア」は喉から出す音なので少し苦労します。「アッサラーム」には「平和」という意味があります。この「アッサラーム アライクム」はいつでも使えますので、覚えてください。

 


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