引用のかたち−全ての言葉は潜在的に引用されている!− 
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はじめに


福沢将樹先生

福沢将樹先生

 本日は題目に「引用のかたち」、副題に「全ての言葉は潜在的に引用されている!」と付けました。しかし実は私の研究の中心はこの引用の話ではなくて、過去や完了などの助動詞、つまり現代語だと「〜した」「〜している」、古い言葉だと「つ」「ぬ」「たり・り」「き」「けり」といった助動詞について研究を進めています。その途中、小説がどのように書かれているのかということを調べる機会がありました。例えば小説の地の文というのは、大抵、過去形で書かれていると思います。古い日本の小説は別とすると、今の日本や欧米の小説の大部分は、地の文が過去形で書かれているのです。そのようなところから文学の分野でも、過去形が小説と非常に密接に関係があるのではないかということが、ここ何十年来言われてきています。それで文学理論も勉強していったわけですが、過去形と小説の関係を調べていくうちに、気になるところがいくつか出てきました。そのうちの1つが、引用とはどういうものなのかということです。この引用の研究はごく最近始めたばかりなので、まだまだ不十分なところも多いかと思います。ですが、今のところ私にとって一番関心のあるものですので、それで今日お話するということです。
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