発達と尊厳−心の健康−1 
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「病める家族」を癒すもの

 窃盗、恐喝、覚醒剤、暴走行為といった非行を起こした子供たちの中には早い時期から非行集団、不良集団に関わっていく、目に見える形のわかりやすい非行の子もいます。一方、世間から見て何が問題なのか、外からはよく見えない子供もいます。お父さんもきちんと働いているし、お母さんもきちんとされている普通の家庭に見えても、家族の中に一歩入り、子供の心の風景を見ていくことで、親子間で激しい葛藤が生じていたか、あるいは、その葛藤をうまく自分で処理できず、問題行動に走っていったか、という様々な心境を垣間見ることができるのではないでしょうか。そのような家族の問題を抱えながら、友達、学校との関係、あるいはその社会の中で自分はどのように見られているか、といった様々なことが重なって、問題行動になっていくのです。
 では我々、社会にいる側から見て、一体何ができるのか、ということを最後にまとめたいと思います。  
 大人の側から見ると、少し悪さをしたり、非行に走ったりすると、「何でそんなことをするんだ!」「おまえのやっていることは信じられない。」「何故謝らないんだ!?」という形でしか接することがない場合が多いですが、多くの場合、子供たちは、自分のしていることの意味は、わかっています。まれに自分のしていることがわかっていない子供もいますが、ほとんどの子供は、人から物を盗ったり、夜暴走行為をすることは、いけないことだ、ということは十分知っているのです。いけないことをやらざるをえない、あるいはやってしまう状況に追い込まれているということを我々大人が理解し、問題を起こす子供と寄り添って少しでもその子供の心の様子を見てあげる。子供たちはかたくなに心を閉ざして見せまいとしていますが、それをこじ開けようとするのでなく、どのような思いで家の中で過ごしているのか、友達と過ごしているのか、学校に行っているのか、それはどれ程つらいことなのか、ということを寄り添うように見ていくことが、子供たちの行動を理解していくことにつながっていくのではないでしょうか。彼らのなかなか描けない心の風景を例えば、家族画という形で垣間見ることができますし、また、なかなか言葉に出せない言葉をじっと聞いてあげるという姿勢が彼らの心を開いていくことになります。まずはそこから始まるのです。以上のように問題を起こす子供の心、あるいはそれを取り巻く家族、また、我々大人の視点を考えていきました。以上で私のお話は終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
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