大学をまちづくりの中心に ―リカレント教育がつくりだす人の循環― 
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活躍する社会人学生とそのOB・OG


 最後に大学がどこで中心になるかですが、 一つは知的な資源を出し、セミナーを作る。そして、いろいろなアンケートやインタビューの調査を重ねながら、さらにはそれを実践されている方々の所に見に行きながらセミナーの設計をします。
 それから、人的資源を出していきます。例えば「くるる」セミナーのディレクターの方々です。この方々は、社会人院生として私のゼミで学んだ人が中心です。
 刈谷市のいきいき刈谷セミナーもその方々のご紹介で、各セミナーに1人以上のディレクターに参加して頂いて、そこに来た方々が、地元の商店街を使いながら何かするように仕向けてもらっています。
 そして、この方々が、出て行くことによって、実は自分も大学に入り直したいという人が出てきました。
 国立大学ですので今のところ許されるかどうかわからないのですが、今考えているのは、その方々を私の研究室のフェロー(市民研究員)として、つなぎ止めておくことができないだろうかということです。この方々が、名古屋大学で学んで、そして社会活動をしていく中で、この循環を作り出していくような機能を果たしていただけないだろうかと考えています。
 地域に出て行かれた方がもう一度大学に帰ってきて、新しいことを勉強しながら、さらに地域に出て行き、新しいことを始めるきっかけとして、このくるるセミナーのディレクターがあってもよいのではないかと考えています。
 このようなリカレント学生の動きが一般の学生にも影響を与え始めています。特に院生、学部生ですが、彼らがセミナーを手伝い始めて、できればこれを自分たちの職にしたいと言い始めています。セミナー事業を請け負いながら、社会をよくしていく企業、つまり社会企業を立ち上げて、そこにある程度の雇用を作り出していくことを考えて良いのではないかということなのです。例えば、大学発学生ベンチャー企業という形を作りながら、彼らも常に勉強をし直し、社会企業を立ち上げて運営をしていく仕組みがあってもいいのではないかと考えています。すでに、「ひと循環型社会支援機構」をベースにしながら、学生達がある企業を作ろうと動きはじめています。
 このように、人々が循環して、新しいものや自分がもっているものを開発し、それを社会のために使っていこうとすることの結び目に、大学は関与できるのではないかと考えています。そして、企業や地元の商店街、更には行政の方々と連携を取りながら、一つの循環を作るようなシステムが出来上がっていくと、とても面白いのではないかと思います。
 また、そこに子ども達が存在することによって、自分がこのまちに生まれ育つことで、このような生き方ができることを知ったり、また自分もそのような生き方をしてみたい、チャレンジしてみたいという一つのイメージが、彼ら自身の生き方も変えるのではないかと期待しています。 これまでで紹介しましたことは、今、実践中ですが、私が申しましたことも参考にしていただいて、これから自治体や大学、民間企業が一つの連携を取りながら新しい社会を作っていく方向に動いていけないだろうかと考え、期待しています。
 ありがとうございました。

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