家庭教育啓発資料「父と子」 
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明君からのメッセージ

 僕は小三の時、父を病気で亡くしました。あれから七年たちました。事情があってお父さんと別れて暮らしている友達とは、少し気持ちの面で違う点があるでしょうが、家に父がいないという点では共通していると思います。
 父親がいないことによるマイナス面は、男同士で語りたいことがあるのに語れないこと、男というものについて教えてもらいたいのにそれができないことです。だから、少し意気地のない性格になったのかなと反省しています。
 しかし、この二点しか思いつかないということは、母のおかげです。僕の母は、尊敬すべき人です。仕事も家事も一人でこなし、僕たちきょうだいに父のいない寂しさを感じさせたことがありません。いつも明るく、一人二役の母です。
 それでもこのごろは、父の背中を見て学ぶこと、たった一人の父からしか学べないことがあるのではと、頭の中で考えることがあります。そんな時は、「いや、本からでも、先生からでも、友達からでも、おじいさんからでも学べるよ」と自分に言い聞かせます。亡くなった父は、嘆いても帰ってこないのですから。
 父のいない家庭は、マイナス面ばかりではありません。それは、みんながいつも家族のことを考えて行動するからです。言い換えると、家族みんなで支え合おうという気持ちが強いということです。僕は長男なので、きょうだいにとって面倒見のよい兄になりたいと思います。兄兼父のような存在、つまり、母にはできないことをしてあげたいと心がけています。「親孝行は、親が死んでからでは遅い」と言われますが、父のいない自分には骨身にしみてよく分かります。だから、毎日、母に親孝行をしたい、母を助けずにはいられないという思いが募ってきます。やれるかどうかは別にして。
 父のいないことをハンディと思っている人がいたら、友達を大切にしたらいいと思います。父の代わりにはならないまでも、違った形で支えてくれると僕は信じています。
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